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子供の背を伸ばす治療に取り組んできた長年の経験から

低身長の治療を語る 月刊メディカルサロン2008年12月号
(2017年加筆)
by 風本真吾(四谷メディカルクリニック院長)

身長を悩みにしている子供がいますが、実は、親のほうが悩みにしていることが多いのです。
「わが子の背が低いのは親である自分のせいではないだろうか」という悩みです。親の背が低い場合は、特に「自分の遺伝ではなかろうか」と親が気に病んでいる場合がしばしばです。

確かに、思春期早発や思春期の伸びが特に悪いケースなどで、遺伝の影響が関与しているケースはあります。しかし、対処方法がなかったわけではありません。幼い頃から注意深く見ていると途中に対処方法があったと思えるケースが大半です。

つまり、低身長に関しては「遺伝の責任」というよりは、「背の伸びに関して、親が十分に学ぶ機会がなかった」ことが原因になっていることが多いのです。「子供の背が伸びていくプロセス」をきっちりと話すことができるご両親はめったにいません。せめて、

  • 「思春期が始まるのは、男の子は11.5歳から、女の子は10.0歳から」
  • 「4歳の時に小さい子は、最後まで低いまま。大逆転はめったにない」
  • 「思春期が始まれば、最終身長までのその後の伸びは、男の子25cm、女の子22cm」
  • 「生理が始まれば、もう数cmしか伸びない」
  • 「ここ1年の伸びが1cmなら、もう止まった段階になる」ということぐらいは知っていてほしいものです。
  • また、「学童期の伸びは毎年5~6cmである」などは最低限知っていてほしい知識です。

なぜ、両親の勉強不足が起こるのでしょうか?これは行政に責任があります。子供の発育プロセスを両親に学んでもらう機会を作ろうとしていません。子供の身長の問題をとりあげることは差別につながるかもしれない、という思いが潜んでいるから手を打てないのです。また、医師側が「身長は個性の問題」という無責任な対応をしてきたことも一因になっています。

私の診療現場で見る限り、どのご両親も子供を育てるのに一生懸命になっています。手抜きをしてきた人なんて一人もいません。「親のせいである」などというケースは皆無です。

低身長は誰のせい?

「低身長は誰のせい?」と尋ねられたとき、私の答えは、「しいて言うなら健康教育の一環として、背の伸びのプロセスを学ぶ機会を与えなかった行政の責任である」というようになるのです。ただし、「学んで知っていたのに、放置した」という場合は親の責任、「学んで知っていたので、小児科に連れて行って相談したのに担当医が解決策を与えてくれなかった」という場合は、医師側に責任があることになるかもしれません。

低身長の最大の原因は幼少時低栄養

体内に病気が潜んでいて低身長になるケースがあります。成長ホルモンの分泌不全やターナー症候群などです。この場合は、通常の保険治療で治療を受けることができます。どんな小児科医でも標準的な治療は実施できますので、私の出番ではありません。調べても病的なものが潜んでおらず、「背が低いのは、体質の問題でしょう」あるいは、「個性の問題ですから」と言われた人に、私が治療を担当していくことになります。

病気が潜んでいない場合で、低身長になる原因で最も多いのは、幼少時の低栄養です。4歳までの食べる量が少なかったために、平均より数cm以上低くなっているケースです。
通常は4歳0ヶ月で、ぴったり100cmになります。これより7cm低ければ、最終身長に達するまで、ずっと7cm低いまま、というのが普通です。4歳0ヶ月で105cmあれば、最終身長も平均より5cm高くなるのが普通です。

4歳0ヶ月における身長の高い、低いは、それまで食べた総量で決まります。たくさん食べる子は大きくなり、あまり食べない子は大きくなりません。動き回るのにあまり食べない子供はとても小さくなるのです。この時点で低かった分は、後に大逆転できることはめったにありません。何かの対策を立てなければ、最後まで低いままだと思わなければいけません。このことは、子育てを開始する前に知ってほしいことです。もうすぐママになるという知人がいたら、教えてあげてください。

母親は子供にたくさん食べさせるために一生懸命になっています。それに対して、子供のほうは自己の食欲の範囲でしか食べようとしません。無理やり食べさせるのも至難です。ここに低身長の大きな原因が潜んでいるのです。解決策はいろいろあります。
私に相談してくだされば、お教えします。

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学童期に、伸び率を高めるには

4歳から思春期が始まる(男の子11歳6ヶ月、女の子10歳0ヶ月)までの5~8年は毎年5~6cmずつ伸びるのが普通です。よく食べる子は6~7cm伸びますが、あまり食べない子は4~5cmしか伸びません。ご両親は、毎年の伸びをよくチェックしてください。

1年の伸びが4cm以下であったときは、すかさず小児科に連れて行って、低身長になる病的な問題が起こっていないかどうかをチェックしてください。成長ホルモンの分泌不全などが潜んでいることがしばしばです。

この時期は病気がなくても伸び率が悪くなることがあります。「学校でイジメにあっている」「担任の先生と相性が悪い」「大好きな祖母が死んでしまったショックで」「両親の不仲を気に病んで」などが原因になっていることがしばしばです。

この時期の伸び率を高めるには、たくさん食べることが重要です。学童期の伸び率は食べる量に比例すると言っても過言ではありません。たくさん食べられない場合は、サプリメントなどで効率的な栄養摂取を考えるのも一つの方法です。また、医療現場では食欲を高めて食べる量を増やしてあげる治療方法が存在します。この治療などは単純に背の伸び率を高めてあげることが可能です。

この学童期には、病気でない場合は、成長ホルモンを注射で投与してもあまり効果はありません。内分泌不全性低身長などの病気の場合以外では、成長ホルモン投与が奏効するのは少ないケースだと思ってください。
この時期は、平均身長に追いつくことを目標として、伸び率を高めることはとても重要です。悩んでいる人は私に相談してください。

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思春期が早く始まった場合

よく勉強しているお母さんは、8~9歳ぐらいの娘を連れてきて、「娘の思春期が早く始まっているみたいです」と相談してくることがあります。

一般に、思春期が1年早く始まれば、5cmの身長ロスが生まれます。2年早く始まれば10cmの身長ロスです。この場合の対処方法は、両親の信条により異なります。思春期の開始を遅らせるという治療もありますが、この治療は性器発育を遅らせるということも意味しています。もともと健康管理指導を大テーマとしている私としては、すすめにくい治療方法です。別の方法で対処することにしています。その対処方法を知りたい人は、私に相談してください。

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よく伸びる時期の2年間

思春期が始まれば、その後の2年間はよく伸びます。男の子なら毎年8~10cm、女の子なら毎年7~9cmの伸びです。この2年間にわが子を連れてくる両親はめったにいません。よく伸びているので安心しているのです。

しかし、この伸びは2年間で終わると言うことを忘れないでください。伸びだすと両親は急に安心して、永遠にこの伸びが続くと勘違いするようです。この油断にだけは注意してください。

この「よく伸びる2年間」は、ちょっとした栄養管理的手法や栄養素の工夫、場合によっては医療的手法で、年間8cm伸びるところを10cmに増やしてあげる、などのことが容易にできるのです。最終身長を高めてあげるための手を打ちやすいキーになる時期でもあるのです。
子供の先のことが心配になっているご両親は、私に相談してください。

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この2年間が終わると、その後3年かけて背の伸びは止まっていきます。

身長が止まりゆく3年間

思春期の大いなる伸びの2年が終了すると、その後3年かけて背の伸びは止まります。この3年間での合計の伸びは、5~8cmです。最初の1年が3~5cm、次の1年が2cm、その次の1年が1cmです。最初の1年の3~5cmの伸びの最中に女の子なら生理が始まります。生理が始まるとその後は3~6cmしか伸びないといわれますが、この伸びの説明から納得できると思います。背の伸びが止まりだしたこの時期に、わが子を連れてくる両親がたくさんいます。有効な治療を施せるぎりぎりの時期になります。この時期に伸びる力を高める治療と延びる期間を延長する治療を行えば、丸3年で15cm以上伸ばせることもしばしばです。

実際の診療現場では、骨端線状況と性発育状況を調べるために採血検査とアルギニンの1か月投与を行ないます。その結果によって、治療方針の選択を行ないます。治療により、どれだけ余分に伸ばせるかを推定してカウンセリングを行います。
この時期は、自己成長ホルモンの分泌力が低下していることがしばしばですので、成長ホルモン投与が有効なことが多くなります。ただし、注射での投与は望ましくありません。

成長ホルモンの投与方法には、注射で投与する場合と舌下投与型のスプレー剤で投与する場合があります。注射で投与しても伸びないのに、舌下スプレーを使うと途端に伸びだすことがよくあります。また、舌下投与スプレーで伸びていた人を注射に切り替えたら、伸びが止まってしまったということもよく経験しました。もともと大学院生を経由しており、研究好きでもある私は両者の違いを研究してきました。低身長の治療に取り組んできた約20年の経験と研究でまとめた成長ホルモンの利用価値に関して述べておきます。

  • 伸び盛りの時期(安定伸長期~よく伸びる2年)で、自己成長ホルモンが分泌されている子供には、成長ホルモンの注射は無効であった。成長ホルモンの舌下投与スプレーは、舌下投与する時刻により効果を示すことがあった。
  • 背の伸びが止まりかけている時期には、成長ホルモンは有効であった。ただし、注射と舌下投与スプレーでは、効果に差異があった。
  • 背の伸びが止まりかけている時期に、成長ホルモンを注射で投与すると、最初の1~2か月で2~7mm伸びることがあるが、その後はすぐに止まってしまい、以後は、にっちもさっちもいかなくなるのが通常であった。ただし、初歩的な再生医療を応用した特別な方法で伸びを挽回させることができたこともあった。
  • 背の伸びが止まりかけている時期に、成長ホルモンの舌下投与スプレーを利用すると、その後、半年から2年、伸び続けることがしばしばであった。
  • 注射と舌下投与スプレーによる効果の差異は、成長ホルモン注射が血中に持続的に成長ホルモンを送り出すのに対し、舌下投与スプレーは、血中に瞬間的濃度ピークを作りだすことによると推定された。つまり、注射による投与では、肝臓等で成長ホルモンが変換された結果のIGF-1の作用が中心となり、骨端線よりも筋肉に強い作用をあらわすと同時に、骨の成熟を促すことによる骨端線閉鎖が進行するのに対し、舌下投与スプレーでは、瞬間的高濃度により、IGF-1に変換される前の「成長ホルモンそのもの」が骨端線に働き掛けるから、と推定された。このことは、成長ホルモンの生理的体内動態(著しい濃度上昇と濃度下降の繰り返し)を考え合わせると興味深い知見である。
  • 腎臓病やベーチェット病などでステロイドを投与されている子供の場合は、成長ホルモン投与は、注射、舌下投与スプレーとも著効を示した。
成長ホルモンの利用方法だけをみても、この時期の治療は、単純ではありません。背の伸びが止まり始めたことを心配しているご両親は、大量の経験と研究を積み重ねた私に相談してください。

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背の伸びが止まる直前、あるいは止まった直後

ここ1年の伸びが1cm以下なら、伸びが止まる直前、あるいは止まった直後です。
レントゲン上「骨端線が閉鎖している」という状態でも2cm以上伸ばせる人がかなりの割合で存在します。多くの小児科医が「骨端線が閉鎖しているともう伸びない」と断言していますが、決してそんなことはありませんでした。レントゲンでは骨端線は認められなくても、顕微鏡レベルでは骨端線が温存されている場合、骨端線エリアが、まだ幹細胞を呼び寄せるシグナルを出してる場合もあるのでしょう。実際に、他院で「骨端線が閉鎖している」と指摘された人でも、当院で治療開始して伸びだした人が大勢通院しています。

特に、最近では再生医療の応用治療を取り入れることにより、「骨端線が閉鎖している」あるいは「骨端線が閉じかけている」という状態からでも、学童期の年5~6cmの伸びを一定期間、再現することができています。状況次第では、胚細胞から軟骨細胞への分化誘導を促して伸びる力を回復できるのです。
この時期は、自己判断でサプリメントなどを使わないほうがいいです。少し伸びたけど、骨端線が最終閉鎖してしまって、その後は、まったく伸びなくなる、ということがしばしばだからです。 性発育を促進してしまうともうだめですので、性発育を抑えながら、1か月に2~4mmの伸びを得て、それを1~2年続けることが治療目標になります。

この時期は治療方法を慎重に検討して最適の手を打たなければいけません。背の伸びが止まったしまったか、と思えるような土壇場の時期に、背をより多く伸ばしたい場合は、必ず私に相談してください。

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わが子を見つめる心得

子育てが始まれば、身体の発育、知的能力の発育、心構えの育成など、ご両親には取り組まなければいけない課題がたくさんあります。身体の発育は、医師任せになることがほとんどでしたが、背の伸びに関してはご両親が自ら学んで、わが子をチェックする体制を築いてほしいと思います。

低身長の治療は早ければ早いほど、有効性の大きい手法を実施することができます。多少は手遅れになってからの治療もありますが、あわてないですむように、子育て中は、早めに先手を取って考えるようにしてほしいと思います。

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