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月刊メディカルサロン「診断」

結婚動機月刊メディカルサロン2011年8月号

東北の大震災後、結婚する男女が増えたそうです。男から女を求めるようになったのか、女から男を求めるようになったのか、よく分かりません。急に増えたということは、それまで「この相手との結婚」に躊躇していたけれど、何かの決心がついたということか、あるいは、結婚相手を急遽探し、勢いよく入籍したということだと思います。

この件を深く考えると、「男にとって、女は何の対象であるのか」「女にとって、男は何の対象であるのか」の一端が見えてくるような気がします。

健康管理を学問化するという使命を背負っている私は、結婚生活、家族形態、日本社会のあり方、日本経済のあるべき姿なども健康管理学の集大成過程においてその必要性を感じており、分析検討しなければいけないと思っています。
1人の人の健康を守るためには、その人を取り巻く生活環境の問題は避けて通れるはずがなく、したがって、結婚生活、家族形態がどうあるべきかには、健康管理の観点から強い関心を持ちます。

国が豊かになって、初めて健康管理学が意味を成します。昔、孔子が「衣食足りて礼節知る」と語ったように、日常生活が貧しく衣食に足りないようでは、健康管理を語るわけにはいきません。高度経済成長期までは、病気になった人の治療だけで十分でしたが、わが国が豊かになって初めて予防医学、健康管理学が脚光を浴びるようになったのです。日本社会のあり方、日本経済のあり方に関心を持たないはずがありません。

さて、冒頭で、大震災後結婚する男女が増えたと述べましたが、健康管理学を追及する私は、男女それぞれの「結婚しよう」と思う動機に対して関心を持ちます。
今回は、男がどのような目的あるいは動機で「結婚しよう」と思うのかに関して語ってみたいと思います。女性には「男はこのように考えていたのだ!!」と悟っていただける、特に婚活女性にとっては「目からウロコ」の話になるかもしれません。

男が結婚を決意するときは、次の6つのどれかが目的、あるいは動機として根底に潜んでいます。

  • 家庭を持つことへの憧れ
  • 社会的信用の確保
  • 地盤獲得
  • 共同事業
  • 後方支援型活動
  • 腐れ縁

以下、それぞれ詳しく語ってみます。

・家庭を持つことへの憧れ

「家に帰ったら、奥さんがいて、子供がいて、手料理がある。奥さんが身の回りの世話をしてくれる」という生活への強烈な憧れを持つ男性がいます。背景にはいろいろな事情が潜んでいますが、こういう男性は早く結婚することを望みます。お付き合いが始まると、早期に「結婚しよう」という話が出てきます。この結婚パターンを家庭憧れ型結婚といいます。家庭に憧れて早く結婚したがっている裏には「自分はモテナイ男だ」という不安が存在することがしばしばです。

・社会的信用の確保

一般的には「独身のままでいると、何か欠陥のある男だと思われる。それを避けるために結婚する」というのを連想しますが、それだけではありません。妻子がいないと、男は今の仕事・地位を捨てて独立しやすくなります。
大企業の経営陣の立場では、いつ辞めてしまうか分からない独身男を引き立てて、会社の機密や重要ノウハウが関与するポジションに着任させるわけにはいきません。したがって、手かせ足かせ代わりに妻子がいることを出世の条件にする傾向が出てきます。「君もそろそろ結婚して社会的信用を得たほうがいいよ」という表現がありますが、これは「妻子を持つことにより、独立を目論む意志はありませんと宣言したらどうかね」を意図する表現です。
こうして、大企業内での出世を目論む男は、会社への忠誠心の証、あるいは独立志向がないことの証として妻子を持つことを余儀なくされます。これを社会的信用確保型結婚といいます。

・地盤獲得

「自分は国会議員になりたい。だからすでに国会議員として集票の地盤を持っている人の娘をもらいたい」というような明確な目的を持って結婚しようとするタイプのものです。これを地盤獲得型結婚といいます。このタイプは、妻になる女性の両親の目的と一致すればスピーディな結婚になります。社会には、妻の両親側の希望のほうが増えているように思いますし、私の身辺でも「この病院を引き継いでくれる独身医師を娘と結婚させたい」という希望をよく聞きます。
地盤獲得型結婚は、男が何かの地盤を求めて結婚しようとするのですから、「俺の力で、小さい会社を大企業へと成長させたい」「俺は日本の農業を大規模化させたいから、農家の娘と結婚して、まずはその耕地を引き継ぎたい」という気骨のある男性もいるかもしれませんが、愛情の存在は後回しになりがちです。

・共同事業交渉

歌手である女性と敏腕マネージャーがいたなら、このふたりは結婚して収入を一つにすることで事業意欲が高まります。このようにふたりで行う一つの事業に対しての収入が、別々あるいはすべてが片方の収入で、もう片方が他方からの給与所得である場合は、結婚して収入を一つにしたほうが優れた結果を残しやすくなります。このタイプの結婚を、共同事業型結婚と名づけます。
家業を引き継ぐ予定の男性が、実は働き手として妻を求めていたというのもこのタイプに属します。

・後方支援活動

「俺は社会でバリバリ活躍していく。お前は余計な口出しをしないで、家の中に納まってひたすら後方支援活動に徹しろ」と女性に要求するタイプのものです。これを期待して妻を探している男性は、それに相当する女性を見つけるとあっという間に結婚します。質素倹約は当然の条件で、妻が自己顕示することを一切認めません。これに相当する現代女性は減ったといえますが、「俺はそのような女性を求めている」という背景には、何が何でも出世してやるという強い意思が秘められています。この形態を後方支援活動型結婚といいます。

・腐れ縁

長期の恋愛になり、いまさら別れるわけにもいかなくなって入籍するケースです。「できちゃった」で結婚するのもこのタイプに属しますので、意外とこの型の結婚は現代的には主流かもしれません。
以上、男の結婚動機を深く分析すると、これら6つに集約されるように思うのですが、他に思い当たる人は教えてください。

さて、本当に早く結婚したいと望んでいる女性は、男と出会ったときに、その男が前掲の6つのどれを求めているかを考えれば早く決着が着きます。そして、男が根底に持った目的を女性側が満たし続けている限り、夫婦生活に大きなトラブルは生じません。この分野では男の欲はそれほど広がりませんので、結婚することになったら、女性は相手の男が6つのうちから当初何を望んでいたのかをよく思い起こし、結婚生活を快適に継続するために自分がどうあるべきかを考えてみてください。特に、腐れ縁型の場合は慎重な検討が必要です。
しかし、結局のところ男が望んだ目的や動機は一過性的であって、ふと気づいたときには、男は結婚生活の中で妻「囚われの身」になっています。
なぜかというと、女性側の結婚動機・結婚目的には強い首尾一貫性があり、常にその目的のために女性は動いているからです。女性の結婚目的は「女の本質」と一致しているので、決して路線がぶれません。結婚生活をめぐって、ぶれる男とぶれない女。この差が「囚われの身」を作っていくのです。

女性の結婚動機・結婚目的については決して文章にできませんので、皆さんで大いに議論なさってください。若いうちにそれを深く悟った男だけが、女性をコントロールできるようになるのかもしれません。

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