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月刊メディカルサロン「診断」

人体、健康、医療を学ぶ突破口づくり月刊メディカルサロン2013年7月号

創業以来の一貫した思い

平成7年に私が著した「一億人の新健康管理バイブル」(講談社)の冒頭に、次のような一節があります。

病院に行ったとしましょう。診察室のやり取りのなかで、あなたは医師と心を結び合わせる会話ができますか。身体の不調を訴えて病院に行ったのですから、世間話ではなく、病気や医療の話でお互い通じ合わなければいけないのです。
病院の「診察室」という窓口で診療に携わっていると、訪ねてくる患者の基礎知識があまりにも乏しいことにあきれてしまうことが多いのです。診察室での医者と患者のやり取りは、証券マンに「株って何ですか?」と質問し、返事を求めている様子に似ています。
私たちは、健康・医療とは切り離すことができない生活をしているのですから、本来なら学校教育か、それに順ずる場で健康管理に関するある程度の知識を得ていなければなりません。その知識があってこそ、医師とあなたは結ばれるのであり、あなたの健康が守られていくのです。健康管理や医療に対する知識がなかったために、有意義な人生を「無念の早死に」で閉じた人たちの姿を、我々医師はいやというほど見てきました。

私が平成4年に四谷メディカルサロンを創業するきっかけになった思いそのものですが、もう20年以上も前にそのような思いを抱き、その後も貫いて生きてきた自分自身に感慨深い何かを感じます。

変わらない現実

この20年あまりの間に、健康に関するテレビ番組が増え、「血液さらさら」「容姿、体力、意欲の回復」などのブームとなった用語も生み出しており、あの頃より国民の健康意識はますます高まったなあ、と実感します。しかし、健康、人体、医療に関する教育が行き届いていないのは相変わらずです。

私たちは、生涯を通じて必要な知識や技術に関しては、学校教育で身につけています。計算、読み書き、歴史、地理、道徳、技術家庭・・・などです。しかし、人体、健康、医療に関してはなぜか学んでいません。
私たちの心、魂は人体に宿っており、生きている間に何度も病気を経験し、健康の状態が意欲にも影響し、そしてやがて死を迎えるのですから、人体、健康、医療のことは生きていくうえで必須の知識です。しかし、学ぶ機会が与えられていないのです。

診察室では、「この病状をこの人に説明するのは無理だ。面倒だから薬だけ出して引き取ってもらおう」という状態になることがしばしばです。健康、医療に関する知識がないがために、ひたすら通い続けている患者が大勢います。自ら学んで、自分の身体を自分の頭脳のコントロール下におけば、「通院なんて不要なのに」という患者が大勢います。
本来なら健康管理の範囲なのに、病気ということにされて、通院させられている患者も大勢います。それらの結果は、理不尽な医療費増大をもたらします。合理的な医療費増大とはいえません。医療費は現役者からの強制徴収を主財源としていますから、めぐり巡って、若い世代の生活を圧迫することになります。

「人体、健康、医療は難しいのだ。医師に任せておけばよい。学んでも身につけるのは難しい。生兵法は怪我の元だぞ」などの思いが蔓延しているのかもしれません。あるいは、全国民が人体、健康、医療に関しては、無知のままでいてくれたほうが何かと好都合であるという思惑が政府や関係者(医師会など)のどこかに潜んでいるのかもしれません。中には、国民医療費が理不尽に増えていくことを小気味よく思っている勢力も存在するのかもしれません。

求められるリスクマネジメント

経営のやり方をまだ知らない創業者の息子が、社長に就任するとその会社はどうなるでしょうか。運よくスタッフに恵まれて、会社を維持しているうちに、社長業の経験を積んで、やがて会社が成長していくということもあるかもしれません。しかし、それは就任した時点で、相当にしっかりとした会社に限ります。たいていは、放漫さが生まれ、従業員の心が離反し、その会社は衰退の道をたどります。
それと同様に、人体、健康、医療のことを知らないで人生を歩むと、間違いなく人体にトラブルを起こして、衰退の道をたどることになるのです。
人体、健康、医療に関しては、きちんと学ぶ機会が必要なのです。

といっても、大学医学部が6年間あるように、人体、医療を学ぶには莫大な時間を要します。内容を絞っても、かなりの量です。学校教育に取り入れるなら、ある程度、系統的に全体を学ぶこともできますが、すでに社会生活を営んでいる社会人に系統的にそれを学べというのは不可能です。社会人に対しては、今後の日常生活に密着した関心のある健康事象からスタートし、いつの間にか、人体、健康の全体像を把握できている、という状態に持ち込まなければいけないのです。これは容易ではありません。容易ではないですが、やらなければいけないのです。これこそが私の社会的使命というものです。

予想医学の伝授

20年以上にわたって、家庭教師的に健康管理指導を行ってきました。ある健康事象を解説するのに、どのような切り口でスタートし、どのようなストーリー構成にすると、面白く、理解しやすく、意欲が高いまま学び続けられるかに関しては、大量の経験を積んでいます。そして、それらの一つひとつは、健康管理の学問化という旗の元で、それぞれがユニットとして、私の胸の中にまとめられています。それらは、「予想医学」の概念の元にまとめられたのです。

これを伝授していくことが、国民のためであり、今後の私の社会的使命となります。まずは、しっかりと伝授する場を設けることにしました。四谷メディカルサロンがあるビルの5階です。その場を舞台として、人体、健康、医療を中心に、私が身につけてきたさまざまな知識、経験を伝授し、それを母体として愛国心あふれる人材、日本の将来を担う人材を育成していきたいと思っています。

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