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月刊メディカルサロン「診断」

死に際の5つの形態月刊メディカルサロン2013年8.9月号

人生のラストシーン

死に際の5つの形態健康、医療、人体を語っていくと、「人は、いつかは必ず死ぬ」という絶対の真実に出会います。死後の世界は、宗教上の問題になりますのでここでは語りません。
「健康で長生きする」を目的とする話は明るくて夢がありますが、「いつかは死ぬ。そして、その死に際は?」という話になると非常に暗い話になってしまいます。
しかし、私が提唱する予想医学は、自己の身体に将来起こりうる事象のすべてを対象としていますので、人生の最後の死に際の話を避けることはできません。気が乗らないながらも筆をとりました。

年をとってくると、だんだんと知人の死に出会う回数が増えてきます。知人の死に出会うごとに、「自分の順番もいつか来る」と覚悟が高まります。死んだ病名はなんとなく伝わってきます。
しかし、その死に際の姿を最後まで見ることはめったにありません。最近は、両親、家族でさえ、その死に際の姿を最後まできっちりと見つめていることが減っています。死に際を見つめる体験は医師にのみ集中されています。
ですから、人の死に際がどのようなものであるかに関しては、心の中でなんとなく蓋をされた状態になります。
つまり、生まれてから死ぬまで自分の人生はどうあるべきかなどは、どんな人も心の中でいろいろ思い描いていることでしょうが、死に向かう最後のシーンを深く考える機会はあまりないのが実情です。今回は「死に際の姿」をテーマとして、自分の人生の最終像がどうあるべきかを考える機会を提供してみたいと思います。

死に際の姿は5態

死に際の姿は、5つのパターンしかありません。その5つをお話しますから、自分はどのパターンで死んでいきたいか、あるいは、どのパターンで死ぬべきか、あるいは、どのパターンに陥ってしまうだろうかを考えながら読んでください。途中で心が暗くなったら、読むのをやめてください。

死に際の5つのパターンとは

  1. ぴんぴんコロリの急死
  2. ある健康トラブルの結果、身体が不自由になって、介護が必要になり、やがて寝たきりになって、肺炎を起こして死ぬ
  3. だんだんと身体全体、あるいは一部の機能が衰えてきて、家に閉じこもるようになり、食べられなくなって、死ぬ
  4. ガンにかかり、数ヶ月から7~8年の闘病の果てに死ぬ
  5. ある日突然、広がったガンが発覚して、1~2ヶ月以内に死ぬ
です。

1)急死

昨日会ったときはぴんぴん元気だったのに、その翌日に死んでしまった、などの突然死のパターンです。病気で突然死んでしまう場合以外に、事故や自殺で死んでしまうこともあります。
プロ野球の巨人軍に木村拓也というコーチがいました。本塁付近でシートノックをしている最中に、突然意識を失って倒れ、救急車で搬送されましたが、5日後に死亡しました。37歳、クモ膜下出血でした。発症当日の朝、「昨夜から頭痛がして、2時間くらいしか眠れなかった」と語っていたそうです。
笑点で司会を務めていた三波伸介さんは、居間で倒れて死んでいました。奥さんが帰宅したときに発見されました。52歳、大動脈瘤破裂だったそうです。

40歳代、50歳代で心筋梗塞で死んでしまう人はたくさんいます。皆さんの身の回りにも、「あの人、いかにも早死にしそう」という人がたくさんいるのではないでしょうか?
高齢者が自宅でひっそりと死んでいることがよくあります。1人暮らしの高齢者に対しては、週に2~3回くらい、自治体から見回りに来るようになっていますので、死後何ヶ月も放置されたというのはさすがになくなってきています。しかし、死後1~2日で発見されるのは、日常茶飯事です。暑い夏の場合は、熱中症で死んでしまった人も多いのではないでしょうか。
ついこの前まで、元気で普通に生活していたのに、突然死んでしまう。死に向かって明確な準備ができませんので、健康管理学上は、このパターンは避けるべきものだと思います。しかし、このパターンは「ぴんぴんコロリ」と賞賛されており、「このパターンで死にたい」と願っている人もいるようです。

2)身体が不自由になって死んでゆく

あるとき、何かの健康トラブルが発生して、以後、身体が不自由になってしまうことがあります。
このパターンは、脳梗塞や脳出血、脊髄系の病気が原因となりがちで、半身不随の麻痺など、後遺障害で身体が不自由になります。交通事故などにより、このパターンになってしまうこともあります。
リハビリセンターに行くと、70~80歳くらいの人がリハビリに励んでいます。その傍らで、50歳前後の人が、やる気なしの状態で呆然としながら、とろとろとリハビリを行っている姿もみかけます。そんな50歳前後の人たちは、つい先日まで、向上心の強いバリバリのビジネスマンであったことがしばしばです。大企業で社長の椅子を狙っていた人もいることでしょう。仕事に燃えすぎて家族をないがしろにしていたことも多く、この先の介護が必要になるという事態に、過去の家族への不徳を後悔し、呆然としているのです。
身体が不自由になれば、生活を続行するためには介護、介助が必要です。長い年月の介護の結果、だんだんと寝たきり状態になり、やがて肺炎を起こして死んでいきます。寝たきりになると肺炎を起こしやすくなるのです。
「この身体が不自由になるパターンだけは避けたい」という人が大勢います。そう思っている人は、脳梗塞だけはしっかりと予防してください。具体的な予防方法は、私の書籍から学んでください。

3)だんだんと衰えて死んでいく

大掛かりな治療を必要とするような大病をすることなく生き延びて、80歳、90歳を超えていくと、だんだんと身体の機能が衰えていきます。腎臓や肝臓など1つの臓器が衰えて死を迎えることがありますが、それぞれは独自の症状を呈し、独特の死に際の姿をとります。
首から下にある臓器の1つが衰えていくわけではない場合、やはり重要になるのは脳機能の衰えです。脳の役割は思考や記憶だけではありません。筋肉を動かす、意欲を高めるという重要な役割を担っています。
つまり、脳の機能が衰えるというのは、身体を動かしづらくなり、そして意欲が湧かず家に閉じこもってしまう状態になることを意味しています。
そんな状態の高齢者の意欲と体力を高める治療がありますが、健康保険がきかないのと「もう高齢だから」という諦めが先行してあまり普及していません。その治療は成長ホルモン医療など私が得意とする分野です。
意欲回復や体力回復の治療をしない限り、やがてだんだんと食事を食べられなくなってしまいます。そして、死んでゆくのです。いわゆる老衰のパターンです。
きっちりと長生きした結果なのですが、このパターンを望む人は意外と少ないようです。

4)ガン治療の闘病の果てに

ガンが発見された場合、手術で取りきれるか、取りきれないかが生死の別れ目です。手術で取りきれたという場合、たいていは助かります。しかし、手術でとりきれなかった場合、その後に抗ガン剤投与や放射線療法という壮絶な闘病人生が待っています。「俺はガンを克服し、奇跡の生還を成し遂げてやる」という強い意欲を持って治療に取り組むのがいいです。しかし、たいていは数ヶ月から8年くらいで死んでいきます。
莫大な治療費がかかることになりますが、日本では治療費の大半を政府が補填してくれます。
日本ではガンで死ぬ人が全死因の3分の1を占めていますから、このパターンが多いことになります。

5)全身に広がったガンが見つかる

まったく普通にぴんぴん元気に生活しています。ところが、ある日「どこが痛い」というような強烈な症状がでます。そして、救急車で運ばれたりします。調べてみると、全身にガンが広がっていたというパターンがあります。
ある日、突然、吐血した患者がいました。胃カメラで見てみると食道がガンでふさがっています。胸の中は食道ガンだらけでした。その人はそんな状態になるまで、お酒ばかり飲んで生活していたのです。緊急入院しましたがまもなく死んでいきました。
「胸の奥のほうが痛いのです」と訴える53歳の患者が大学病院の外来に来ました。ヘビースモーカーです。毎年、健康診断を受けており、去年の健康診断では異常なしの人でした。調べてみると、片肺に胸水が充満していました。肺ガンです。肺ガンの中でも最悪の小細胞ガンというタイプでした。ヘビースモーカーに多いのです。進行が早く1ヶ月あまりで死んでいきました。入院直後には、「もうタバコはやめますから、何とか助けてください」と懇願していた姿が、今でもまぶたの裏に残っています。
全身に広がったガンが見つかるというのは、日ごろ身体を調べない人に生じる現象です。健康保険制度が行き渡っている日本では、容易に受診できるおかげで、このパターンは珍しいものになっています。しかし、イギリスでは、救急車で運ばれてきた患者の4~5人に1人が、「そのときに発見された全身に広がったガン」なのです。費用の問題などで容易に病院を受診できない場合、このパターンは非常に多いと思ってください。発見されたあとは、痛みを除く治療が中心となりますが、大体1~2ヶ月くらいで死んでしまいます。

あなたはどれを選びますか

将来、皆さんは、これらの5つのパターンのどれかで死ぬことになります。もう一度述べますと、

  1. ぴんぴんコロリの急死
  2. ある健康トラブルの結果、身体が不自由になって、介護が必要になり、やがて寝たきりになって、肺炎を起こして死ぬ
  3. だんだんと身体全体、あるいは一部の機能が衰えてきて、家に閉じこもるようになり、食べられなくなって死ぬ
  4. ガンにかかり、数ヶ月から7~8年の闘病の果てに死ぬ
  5. ある日、突然、広がったガンが発覚して、1~2ヶ月以内に死ぬ

の5つです。どれがいいと思いますか?

セミナーや講演などで、この話をすることがあります。話をする前は、「ぴんぴんコロリがいい」と大勢の人が手を挙げます。しかし、話を聞いた後は、「全身に広がったガンがいい」という人が多数になります。死に際だけを考えるとそうなるのでしょう。ほとんどの人は、ガン闘病の果てに死ぬのはいやだと語ります。
しかし、ガン闘病の果てに死ぬのは、早期発見に努めたけども「見つかったときは手遅れだった」というタイプのもので、その裏には早期に見つかって手術でとりきれて助かったという人も大勢います。

日本では毎年125万人くらいが死んでいきますが、その3分の1はガンです。ほとんどが、4の「ガン闘病の果てに」というパターンです。仮に、「早期発見」を放棄して、ガンを早く発見しようとする人間ドックなどをやめてしまえば、ガンが芽生えた人は手術で助かることは少なくなり、ほとんどが5のパターンになります。その場合、ガンで死ぬ人の総数が増えるような気がしますが、実際にどうなるかはわかりません。
手術で取りきれないガンが見つかったときに「治療はしない」と宣言し、自ら5のパターンを選択する人もいます。しかし、健康保険制度が行き届いている日本では、医療機関側が積極的に、ガン闘病をすすめようとするのが現状です。ガンの闘病に健康保険がきかなくなったら、様相は一変することでしょう。

3のように長く生き抜いて、土壇場まで元気でいるのが一番です。90歳、110歳の土壇場まで意欲高く自分の足でどこにでも行けて、しかも若々しい姿である。死に際は自然に昏睡に陥り数日で死んでいく。そうできるように研究するのがまた私の立場でもあるのです。

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