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月刊メディカルサロン「診断」

コレステロール薬が健康保険適応でなかったなら・・・月刊メディカルサロン2014年8月号

笑い事ではない!日本の医療費の実情

国民医療費は増える一方です。医療従事者にとっては喜ばしいことかもしれませんが、その費用のほとんどが、現役世代から徴収している健康保険の掛け金と国庫の負担で成り立っていることを考えると笑い事ではありません。国庫の負担ということは、いうまでもなく税収からの負担です。国民医療費に関する数値は毎年微妙に変化しますが、大雑把な数値をまず知って欲しいと思います。

国民医療費が40兆円近くになっています。このうち、健康保険の掛け金として徴収できているのが、50%に相当する約20兆円です。自己負担分が約10%、これが4兆円です。残りの40%の16兆円は、国庫から支出しています。つまり、国の税収のうち約16兆円は、医療費に使われているのです。
40兆円のうち、医薬品が約10兆円を占めています。総医療費の25%です。この中には調剤費という手間代が入っていますので、医薬品単独では総医療費の約20%ということになります。見方を変えると医療機関は、「仕入原価率20%で運営されている」といえるのかもしれません。

薬の背景にちらつく作為

コレステロール薬が健康保険適応でなかったなら・・・ 医薬品でもっとも大きな金額になるのがコレステロールの薬です。3000億円を占めています。今回は、ここに焦点を当ててみましょう。

健康診断におけるコレステロールの基準値が変更されるという話があります。今までは、220mg/dl以上を異常値とてきましたが、これを250mg/dl以上に変更しようというのです。首を傾げる人も多いでしょう。

でも、歴史を振り返ってみると、20年以上前は、250mg/dl以上が異常値だったのです。数年前に、動脈硬化系の学会において、200mg/dl以上を異常値にしようという機運がありました。基準値を低くすれば、異常を指摘される人が大増加します。基準値を高くすれば、異常を指摘される人は大減少することは言うまでもありません。これらの背景には、「あらゆる専門家は素人に対して詐欺的である」という誰かの名言がちらつきます。

肥満が富の象徴から社会問題へ

1960年代、心筋梗塞による突然死が多かった先進諸国において、その原因探しが行われました。そして、「コレステロールが原因らしい」という提案がなされたのです。確かに、心筋梗塞を発症した人のコレステロール値が高かったのは間違いありません。
結果、脂肪摂取を減らしてコレステロールを下げようという社会運動が起こりました。牛、豚のアブラ、乳製品などの飽和脂肪酸の摂取量を減らすとコレステロールは低下します。ダイエットの必要性が叫ばれ、太っていることが「富の象徴」とされた時代から、「身についた贅肉は、心の贅肉の現われ」という時代への変化しました。

基準値という名のコントロール

1980年代、コレステロールを下げる薬が開発されました。スタチン系薬剤といわれるものです。製薬各社は莫大な研究費をつぎ込んだものと思います。世の中は、美食・飽食、そして健康志向が高まった時代。「コレステロールが高いと、心筋梗塞を起こす」という脅しのもとで、コレステロール降下薬を内服する人が一気に増え、2000年を超える頃には世界で最も売れている薬になりました。

1980年代の日本において、コレステロールの基準値は250mg/dl以下でした。しかし、この薬が開発されてから、急遽、基準値として220mg/dlに境界線を引くことになったのです。「薬が開発されたから基準値を下げた」という事実が残っているのです。循環器系、あるいは動脈硬化系の学会が主導したのか、厚労省が主導したのかは不明ですが、製薬会社が暗躍したであろう事は容易に想像されます。当然、医師側からの「あなたはコレステロールが異常値です。この薬を飲みなさい」という指導に大義名分が付加されました。

このようにして、大量のコレステロール薬内服者が誕生しました。それに飽き足らず、2000年代になってからは、コレステロールの基準値は200mg/dl以下にするべきだ、と声高に叫ぶ学会の重鎮医師が現れました。研究者の世界では、悪乗り(?)する者が必ず現れます。「コレステロールが高いとガンの発症率が高くなる」など、さまざまな発表があったものです。

事実、心筋梗塞の発症は減ったのか?

さて、さすがに年月がたつと、世界中に広がったコレステロールの薬の功罪が検証されるようになります。検証のテーマは、次の一点に集約されます。
「確かに、心筋梗塞を起こした人は、もともとコレステロール値が高い人が多かった。では、心筋梗塞を起こしていない人で、コレステロール値が高い人が、薬でそのコレステロール値を下げたら、心筋梗塞の発症は減ったのか?」
日本はこのような研究が苦手です。日本では必ず「減った」という答えになります。それほどに製薬会社と調査する医師との癒着構造が進んでいるのです。
世界的な調査研究の結果は、
「減らなかった」
です。厳密には「家族性高コレステロール血症などの遺伝要素を持っている人に限っては、コレステロール値を薬で低下させることにより、心筋梗塞の発症を減らせたようだ。しかし、その遺伝要素を持っていない人のコレステロール値を薬で低下させても心筋梗塞の発症率は変わらなかった」というものです。つまり、食生活が原因でコレステロールが高い場合は、薬で下げても無意味ということなのです。

これらの結果を受け、私は次のように考えて健康管理指導の現場で活かしています。
「肥満者に心筋梗塞が多いのは確かである。そして、その肥満者にコレステロール値が高い人が多いのも確かである。しかし、コレステロール値そのものが原因ではなく、肥満をもたらす食生活の中に、心筋梗塞発症の真犯人が潜んでいる。真犯人は、血小板凝集、凝固に関連するEPA体質、アラキドン酸体質、そして、PAI-1である」

利害関係を断ち、コントロールの外側へ

今は、情報が容易に得られる時代。「コレステロール値」に関しても、インターネットで大量の情報を得られます。そんな時代ですから、いっそのこと、コレステロールの薬を健康保険の枠組みから外してしまえばいいのです。
そうすれば、コレステロールの薬は自費で入手しなければいけなくなります。思わぬ費用がかかりますから、自分の身体にとって、本当に必要かどうかを一生懸命に調べます。患者本人が必要不要の結論を出し、その過程で、真剣味のこもった食生活の改善もなされます。
製薬業界、医師会、調剤業界などさまざまな利害が絡んで実現困難なように思いますが、コレステロールの薬などは一般の薬局で購入できるようにしてしまいたいものです。担当医がいるなら、「薬局で購入して、○○の薬を飲んでいます」と告げればよろしい。内服中の問題などは、その担当医がアドバイスしてくれるでしょう。

私が「健康保険制度にはひずみが目立つ。破綻したときに、改良により立て直さなければならないが、その下支えとなるのは、健康教育活動である」と論じているのは、それらのことをさらに深く考えた結果なのです。あらゆる医療関連業界とのしがらみ、利害関係を絶って、健康教育活動を行っている母体組織が国家に存在すれば、大いに役立ち、救われるのです。

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