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月刊メディカルサロン「診断」

君島一郎氏の急死に想う月刊メディカルサロン1996年8月

君島一郎氏が心筋梗塞でお亡くなりになりました。67歳でした。

75歳以下で死んでしまう原因の93%は、ガン、心筋梗塞、脳血管疾患のどれかですから、心筋梗塞で死んだということは決して驚くには値しません。心筋梗塞の特徴から考えると「つい昨日まで元気だったのに・・・」と悔やむのも筋違いかと思われます。

ちなみに、あなたが今、心筋梗塞を突然発症したとします。周囲の人が慌てて救急車を呼ぶことでしょう。あなたが生きた状態で病院まで運ばれる確率は約70%です。病院にたどり着いても、約30%の確率で治療の甲斐なく死んでしまいます。要するに心筋梗塞は1度発症してしまえば、約半数の人はその一度限りで死んでしまうのです。

君島氏がどのような生活を送っていたのか知りませんが、かなり動脈硬化がすすんでいたのでしょう。動脈硬化がすすむということは、動脈の内側に凸凹になっていたということです。そこを流れる血液が乱流を形成し、乱流の中で血小板の塊ができ、その塊が血管を詰めてしまったのです。

君島氏は、日頃の健康管理上、何かに取り組んでいたのでしょうか。健康管理は漠然と取り組むものではありません。ガン、心筋梗塞、脳血管障害にたいして具体的な危機管理としての対策を考えなければならないのです。具体的な危機管理といっても、小さな心筋梗塞や小さな脳梗塞を起こした経験のある人は強い実感を持てますが、これまで病院と縁が乏しく、健康に生活してきた人にはなかなか実感が湧かないものです。それでいて、ある日、一撃必殺(?)の病気として襲ってくるのです。健康管理の必要性と意義を説いても、きっちりと取り組む人は比較的稀です。会社運営において全く無防備状態の時に国税調査が入るのと同じで、重い病気を一度経験するまでその気にならないのが実状でしょう。

ガン、心筋梗塞、脳血管障害を発症する可能性を確率論で考え、予防医学を積極的に活用し具体的な危機管理としての対策を立てていく。それが健康管理というものです。日頃から少しでも学ぼう、医師のアドバイスに耳を傾けようという意識があれば、心筋梗塞の発症率を下げておく方法はいくつもあったのです。

君島氏には最近何かとストレスが多かったのでしょう。ストレスが強い時期には血小板の塊ができやすくなっているので、それなりの特殊な対策方法があるのです。その方法をアドバイスできる医師が身近にいなかったのが彼にとっての不幸であったように思います。何はともあれ、惜しい人を亡くしました。

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