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月刊メディカルサロン「診断」

新卒社会人への訓え掲載日2023年6月30日
月刊メディカルサロン7月号

時の流れは早いもので、いつの間にか私も「リタイア」を意識しだす年齢になりました。この「診断」の執筆を始めたのが29歳の時ですから、30年はあっという間でした。同世代の間では、老後資金が話題になり始めます。
老後資金と言えば、年金を思い浮かべるのが普通かもしれません。しかし私は、「年金を受け取る」に対して、どうしても肯定的な気分になれません。「若い時から積み立てたお金のリターン」と言われれば、正々堂々と受け取る気分になれます。でも、「現役世代から徴収したお金をあなたに配っているのです」と言われると、どうしても受け取る気分にはなりません。現役世代の人たちというのは、我々の世代が支援して守ってあげるべき人たちであって、その人たちを苦しめて徴収したお金をいただくということには、人としての尊厳の問題を感じるのです。「与えて奪うことなかれ(どれほど与えることがあっても決して奪おうとしてはいけない)」の私の信条に反します。

蓄えるべき4つの資産

人は生まれた時から、あるいは社会人になった時から、日々、資産を蓄えていかなければいけません。この資産には4つの形態があります。 
第一が「知的資産」です。勉強し、学習し、経験し、そして総括することでいろいろなことを身につけるのです。身の回りの出来事から学び、人から教わり、書物を読むのです。自分が健康で五体満足であるなら、いつでも自分の頭脳や身体から引き出すことができる資産。それが知的資産です。
第二が「人的資産」です。人に親切に接し、その人を理解しようと努力し、豊富なコミュニケーションをとる中で、信用関係が出来上がり、自分のためには多少の犠牲も厭わなくなってくれた人。それが人的資産です。
第三が「名声」です。正義を遂行し、邪悪を排し、物事に対して正々堂々と真正面から取り組んでいく。そして、親を大切にし、親を気遣い、「親孝行だね」と言われる。それを名声と言います。名声を獲得した人がひとたび起業で立ち上がると、あっという間に人々の心を集めることができます。
第四がお金。つまり「財的資産」です。財的資産は、現金、定期預金、国債、社債、株、投資信託、不動産など、いくつかの形態になって蓄えられます。
社会人になったその日から、昨日よりも今日、今日よりも明日、今月よりも来月、今年よりも来年と、この4つの資産を増やしていかなければいけないのです。
知的資産、人的資産、名声を日々獲得しながら、その後ろ側に財的資産がついてくる。そういう生活を営めたら、まずは順風満帆な人生を送ることができます。
知的資産や人的資産や名声を切り売り減損させながらお金集めに必死になっている人は、まず不幸が待ち受けます。ネットワークビジネスなどは人的資産切り売り、名声斬り捨ての最たるビジネスです。思い切った意識の改革を成さなければいけません。
社会人になって知的資産、人的資産、名声を獲得しながら、その後ろ側に財的資産を蓄えていきたいなら、知っておかなければいけない心得があります。そのうち3つをお話します。

心得1 ブランド物をどう理解するか

シャネルのバッグを持って見せ歩きたい若者がいます。そのバッグを気に入り、欲しくて仕方がなかったから手に入れたのは間違いありません。
しかし、その人たちは外から見た時に、羨ましいなあ、素敵な人だなあ、などとは思われません。「私の人間的価値はシャネルのバッグ以下です」と言い歩いているようなものです。人は、自分より価値的に下のものには憧れません。シャネルのバッグに憧れるのは、シャネルのバッグが自分の価値より上に位置するからなのです。何かに憧れた瞬間、その者の人間的価値が悟られてしまいます。うかつに自分をばらしてはいけません。
プレゼントで高級バッグを贈るのもよくありません。本人は喜んでくれますし、いいものをプレゼントしてあげたい気持ちはわかりますが、「君の価値はこのバッグ以下だよ。だから嬉しいだろ」と言っているのと同じことになるのです。バッグの中にしまう長財布などで質のいい高級なものを贈ってあげれることをおすすめします。

あり余る貯金を持つ人が、ちょっとしたおしゃれ道具のつもりでシャネルのバッグは持つのはいいのです。若者が今、シャネルのバッグを買うのをやめてそのお金を貯金したら、そのお金は20年後には10倍以上になり、自分を裕福にしてくれる元となるのです。

心得2 必要なものと不要なもの

日常生活に必要なものと不要なもの、どちらが高くてどちらが安いのでしょうか?よく考えてみてください。
身の回りのもので絶対に必要なのは、米、水、塩です。安いでしょうか、高いでしょうか?不要なのは、高級時計にゴッホの絵です。高いでしょうか、安いでしょうか?
必要だから高い、不要だから安いのではないのです。あなたが高価なものを欲しがっている時、まずそれは不要なものなのです。
一般的に不要なものは高くしないと売れません。必要なものを高くすると社会革命につながるので、高くできません。それが社会法則というものです。
あるものが世に出現して驚くほど高価であったら、それは不要なものです。しかし、それが正しく社会に定着し、必要なものになると安くなるのです。美容外科やエステの脱毛価格の変遷を見ればわかりやすいです。85インチなどの大画面テレビが売りだされた瞬間とその1年後や3年後で価格を比較してみればいいです。高額のものが正しく社会に定着しなければ、その高額物は社会から消えていきます。この法則の中で、自分ならどうするべきかを考えるのです。

心得3 毎月の1万円と一括の500万円

毎月入ってくる1万円と目の前に積み上げられた500万円。どちらに価値があると思いますか。
毎月1万円と言えば年間12万円。これは500万円の金利に相当します。だから、積み上げられた500万円と毎月の1万円は同じ価値だと思わなければいけません。「このアプリは、毎月100円か。安いものだ。じゃあやろう」と思った時、それが一括支払いの5万円ならどうするかを同時に考えるようにするのです。
ある美容外科的施術を奨められた時に、「ローンが組めるから月々はたったの3万円よ」と言われたら、同時にその3万円に相当する一括の1500万円と比較する気持ちを持つのです。
車も同様です。500万円の車を買う時に、「ローンを組んで月々8万円か」と計算するのと同時に、「それは積み上げられた4000万円に相当するのか」と念頭に置くのです。
右も左もわからない学生に、学生支援機構のローンを組ませて、社会人になってから月々1~2万円を返済させる社会の仕組みに私は怒っています。
カードショッピングにおけるリボルビング払いも同様です。「リボルビングで月々10万円までは大丈夫」と思っているうちに、破綻人生へと落ち込むのです。
無いお金で買い物してはいけません。しっかりと貯金して持っているお金の範囲で買い物するようにするのです。そうすると今度は買い物する気もなくなってきます。それが成功人生の始まりです。たった1年間の辛抱が運命を決めるのです。

成功人生を歩め

社会人になった瞬間から、成功人生を歩むか、失敗人生へと落ち込むかを分けていく熾烈な日々が始まります。
成功人生を歩むための大切な心得はいくつもありますが、そのうち重要なものは5つです。紙面の都合で今回は3つだけお話しできましたが、残りの2つは機会があるときにお話ししましょう。診療現場ではときどき話していますけど。

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