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月刊メディカルサロン「診断」

信用あれこれ月刊メディカルサロン1998年2月号

「そんな話しは怪しい。信用しちゃいけない」「彼は信用していいよ。きっと上手くやってくれるだろう」「信用が一番大切だ。信用さえあれば何とかやっていける」「今の政治は信用できない。あんな奴等がはびこっているのだから」「うかつに人を信じちゃいけないよ」「そんな話、何を基準に信用したらいいのだろうか」「とにかく俺を信用してくれ。何とかやってみせるから」「あんな話を信用してしまったばかりに・・・」

私の身辺では、最近何かと「信用」がテーマとなることが増えてきました。そこで、今一つピンと来ない「信用」というものを社会の現状を分析し、考慮してみました。

「信用」を獲得するために「あの人は信用できる」「この場合は信用していい」と判断する根拠は何なのでしょうか。あなたが誰かを信用するべきかどうかというケースに出会ったことを想定してみましょう。

ある人が突然、あなたの前に現れたとします。その人の言うことを信用していいかどうかを考慮するときには何を基準にしていますか。「俺の直感がこの話を信じろといっている」という豪快な人もいますが、一般的に次の3つのどれかが備わっているかどうかをみるようです。

1、実績、経歴

「東京大学を卒業しているから信用しよう」「やたらと転職した経歴がないから信用しよう」「上場会社の社員だから信用しよう」「同じ内容のことを過去に成功させているから信用しよう」その人をよくみて信用するかどうかを決めるというパターンです。自分の眼力が大切になります。この眼力一本で人生の勝敗を分けていくことも多いのではないでしょうか。

2、現金または、その代用物を預ける

「もし私の言うことがウソだったら、この預けた現金をすべてさしあげます」なんていう話をされると、これは信用せざるを得なくなります。

3、しかるべき人の紹介を受ける

「国会議員の◯◯さんの紹介だから信用しよう」「かの有名な◯◯さんの薦めだし・・・」というタイプのものです。紹介してくれた人の顔を立てるために信用せざるを得なくなります。

以上の3つのどれか1つでも満たされているならば「とりあえずこの人は信用していいようだ」と判断するのが現状のようです。

ちなみに今の金融機関は、2のケースしか納得しなくなっているようですし、「◯◯さんのすすめだから信用していたのに・・・」という悔悟話が増えているのも現状のようです。

「信用」を維持するために

さて今度は、あなたが苦心の末、何とか信用を獲得した立場であると想定しましょう。次の段階として、信用を維持することを考えねばならなくなります。信用を維持するためには以下の3つが必要になってきます。

1、課題に一生懸命とりくむ

当たり前のことですが、一生懸命取り組んでいる姿がなければせっかく獲得した信用は瞬間的に消えていきます。

2、公明正大さを必要以上にアピールする

「自分は正しい、悪いことはしていない、一生懸命課題に取り組んでいる」というだけでは信用を維持できないのです。「ここまでアピールする必要があるのだろうか」と思うぐらい過剰に公明正大さを訴える方法を考えなければなりません。自分を信用してくれた筈の相手ではあっても「あの人を信用したけれど本当に大丈夫なのだろうか」という疑心暗鬼が必ず存在しているということを念頭に置かなければなりません。

3、豊富なコミュニケーション

信用され任された瞬間、相手と連絡を取り合うことを疎ましく思う人が多いようです。いったん信用させたのだから、あとは自分の意志で思う存分やりたい。人の意見に左右されたくないという心理が働くのでしょう。この場合もまた、せっかく獲得した信用が急速にしぼんでしまいます。常に連絡を取り合う心構えが必要です。

「信用を維持する」ためには以上の3つのすべてが必要になります。「信用を獲得する」には前記の3つのどれか一つでよかったのですから、「信用を維持する」のがいかに難しいことかよくわかります。ある一人の人、ある一つの話を信用するかどうかでたくさんの泣き笑い物語が誕生します。信用をスタートとして、栄えた人、滅んだ人などまさにさまざまでしょう。

いろんな方面に不信感が蔓延している日本の現状を鑑みると、小さくは自分のまわりの人間関係から、大きくは天下国家の大事に至るまで、この信用というものを深く科学的に見つめ直す時代になっているように思います。

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