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月刊メディカルサロン「診断」

体重管理は目標論で月刊メディカルサロン1998年3月号

かつて通産大臣を務めた衆議院の塚原代議士が心筋梗塞で死亡しました。まだ50歳でした。でっぷりと太ったあのお身体でしたので心筋梗塞をおこしたのもやむを得ないでしょう。「太っている人に心筋梗塞が多い」ということは再認識してください。

そういえば「太った元気なおじいちゃん」は滅多にみられません。80歳、90歳になるまでにいつの間にか死んでいるのです。太っている人に多い病気としては、やはり心筋梗塞が有名です。他に、糖尿病、高脂血症、胆石症、脂肪肝などが知られています。女性ではさらに、不妊症や妊娠中毒症が多いようです。また、太っている人にはいびきが多いことも知られています。脳梗塞も多いようですし、命に直結するガンについても、大腸ガン、胆嚢ガン、前立腺ガン、子宮体ガン、乳ガンなどは太っている人に多くなります。仮にこのような病気にかからずに長年生き延びたとしましょう。そのときは膝がダメになっているのです。長年過剰な体重を支えてきた結果、膝の関節が壊れてしまい変形してきます。変形性膝関節症といいますが、歩けなくなってしまい、車椅子が必要になります。結局、「太った元気なおじいちゃん」は存在しないことになるのです。

体重は毎日の食事の平均量に単純に相関します。「私は、そんなに食べてないんです。私は水を飲んでも太るんです」という人がいますが、それはただのいいわけです。1ヶ月間、水だけで生活したら。男性なら10~17kg、女性なら7~12kgは体重が減ってしまいます。「何も食べなければ12kg減る。ちょっと食べれば10kgしか減らない。もうちょっと食べれば8kgしか減らない。ええいもっと食べてしまえ、で5kgしか減らない」という風に考えれば、食べる量に比例することが理解できることと思います。

しかし、現在は昔と違って食べるものが豊富にあります。そしてどの食べ物も美味しいのです。しかも困ったことに、食料の乏しかった時代の躾として「一粒残らず食べなさい」が根付いています。体重を減らすことがとても難しくなったのです。

運動で体重を減らそうと努力する人がいます。現実上は運動だけで体重を減らすのは困難です。下手に運動したためにかえって膝を悪くしてしまったという人も大勢います。結局、どう考えても体重を減らすためには食生活の改善を中心に据えなければなりません。

診察室で「体重を減らした方がいいでしょう」「努力はしているのですが」「まあ、がんばって下さい」なんていう漫画的な会話を続けている場合ではありません。体重管理は健康管理の中核に位置しているのです。

そのような現状を考えて、私は5~6年前から、医療用の食欲抑制剤「マジンドール」に注目し、減量指導には特に意欲を注いできました。マジンドールは脳内の満腹中枢に働きかけ、食べたいという気持ちを低下させる作用やちょっと食べただけで「ああ満腹だ」と満足させる作用を持っています。その結果、食べる量が減るので、体重が減っていきます。

このタイプの薬は、使用方法に工夫が必要です。「飲んで下さい」といってただ渡すだけでは十分な効果を発揮できません。私は、実際にマジンドールを内服中の人と旅行に行くなど24時間の観察を何度も繰り返すだけでなく、自分が内服して体験し、最良の利用方法を考え出してきました。その結果、いともたやすく、目標体重まで減量する指導ができるようになりました。そのノウハウに関しては、私以上の医師は日本にはいないでしょう。マジンドールの活用に関して私の境地に到達している医師は他に存在しないと断言できます。私は常時100人以上のマジンドール利用者を管理していますが、その人達の状態は手に取るようにわかっています。

薬を利用することを毛嫌いする人がいるようです。そういう人は薬というのは盲目的に利用せざるを得ないものと思っているようです。薬は嫌うものではありません。効果、作用時間、副作用をよく知った上で、自分の生活に利便性を加え、豊かにするために、自分の頭脳を中心にして上手に利用するものなのです。

体重を減らすことがなかなかできないと思っている人には、柔軟な思考をもって、ほんの短期間だけでもマジンドールを利用して、食事量がほどよく少なくなる習慣を身につけることが賢明だと思います。

また、「美しく見せたい」を目的に痩せたいと訴える女性も多くいます。「自分は美しい」という自己満足が女性を内面的にも美しくしていきます。女性の痩せたい欲求に対しても柔軟な姿勢で対処するべきでしょう。

どちらにしても体重管理においては食事量の調整が絶対に必要な課題といえます。体重管理を論じる上では、「日常の自由気ままな食生活の結果、いまの体重になってしまっている」という結果論ではなく、「自分は一生何kgの体重でいくぞ。そのために、このような食生活にするぞ」という目標論として考えていただきたいと思います。

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