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月刊メディカルサロン「診断」

健康管理に三態あり月刊メディカルサロン1999年10月号

健康管理という語は実に漠然としています。

「健康管理とはどうすることですか」と普通の医師に尋ねても、すぐには返事が返ってきません。考え込んだ末に、「毎年人間ドックに行くこと」や「ほどよく運動すること」「早寝早起き」「腹八分目」など、ありふれた俗語しか答えてくれません。

それらの俗語もなかなか含蓄深いのですが、医師がそう答えては、なんのために長年、医学を勉強してきたのかと詰め寄りたくなってしまいます。今回は、私が日ごろよくお話しする、「健康管理に三態あり」を話していきましょう。

まず一つ目。「90歳を超えても頭脳明晰で、自分の足でどこにでも行ける」という目標を立てるとします。あなたがその目標を達成できない、つまり、90歳までに死んでしまうとしたら、それはどのような病気によるのかを考えます。
心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、胃ガン、肺ガン、大腸ガン、肝臓ガン、すい臓ガンの9つのどれかでしょう(女性なら、子宮ガン、乳がんが加わります)。
となると、その9つ(女性の場合11)に対する、徹底した予防方法を考えることが、必要条件的に重要になります。それらの9つには、確かに予防方法があるのです。また、からだを調べることにより、あなたが9つのうち、将来どの病気にかかりやすいかを予想することができるのです。
からだの状態をよく分析検討して、もし、9つの病気どれかにかかるとしたらどれかを予想し、その病気にならないような対策を施しておく。9つの病気にさえかからなければ、90歳を超えてもぴんぴん元気でいられる可能性は、飛躍的に高まります。

「こうすれば胃ガンにかからない」「こうすれば脳梗塞をおこさない」

そのような医学を進歩させて、実際にからだにそれらを積み重ねて、命に関わるような重大な健康トラブルが起こらないようにする。以上を「寿命管理」と申します。

次いで二つ目。「元気だ。体調がいい。絶好調だ。食欲もあるし、性欲もある。意欲があふれてくる」そのような肉体を維持しつづけることが大切です。ただ、普通に生活しているだけでは、体調に波が生まれてしまいます。健康管理の学問に基づいて、調子の波なく絶好調を続けなければなりません。
「もっとも理想的な睡眠のとり方は?」「お酒を飲みすぎても体調を壊さないコツは?」「睡眠不足でも体調を崩さないようにするには?」「ストレスが大きくなっても体調を維持するためには?」医学的背景に基づいてそれらの答えを出さねばなりません。「風邪をひいてしまった。大事な仕事の時期なのに」などという時でも、仕事にまったく影響が出ないようにする肉体コントロールのテクニックも大切です。これらをまとめて「体調管理」と申します。

最後の三つ目。「そんなに年をとるまで生きていて何が楽しいんだ。しわくちゃのおじいさんになるだけだ」そんな声が今でも聞かれますが、それは間違っています。今の90歳、100歳の姿を想像するから勘違いするのです。千円札の夏目漱石を見てください。すっかりお年よりの姿ですが、実は46歳の写真です。
人の見かけの姿は、年々若くなっているのです。より若々しくするための医学もまた必要です。何歳になっても若々しい姿を維持すること。これも健康管理なのです。90歳になっても千円札の夏目漱石の容姿でいる、という目標を立ててください。その目標を成し遂げるための肉体管理、それを「容姿管理」と申します。

以上の健康管理三態・寿命管理、体調管理、容姿管理のノウハウはメディカルサロンに蓄積されています。

人間ドックで定められた項目のチェックだけを行い、精密検査だ、薬で治療だ、などという程度にしか考えられていなかった従来の予防医学を、以上のようなレベルにまで高められたのは、会員の皆様とのコミュニケーションを通じて、毎日、健康管理の学問化ばかりを考えている私の成果だと、多少は自負しております。さらなる向上をめざして切磋琢磨中です。

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