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月刊メディカルサロン「診断」

免疫力の位置づけ月刊メディカルサロン2000年2月号

私の慶応病院時代に、「クローン病」という小腸から大腸にかけて潰瘍が多発する特殊な病気を持っている女性の患者がいました。病気の治療状態はきわめて良好で順調な日々を送っていました。それなのに、ある日の彼氏との恋愛の破局をきっかけに、病気は猛烈に悪化し、強い腹痛と下血が出現しました。副腎皮質ホルモン剤の増強を含め、強烈な治療を行いましたが、効果が現れませんでした。数年間、治療が難航しましたが、ある日を境に急速に病状は軽快していきました。特殊な治療を行ったわけではありません。

その女性に新しい恋が芽生えたのが、軽快のきっかけでした。

「クローン病」というのは、実は免疫異常が原因となる疾患です。その女性の心の状態が「免疫状態」に大きな変化を与え、病状の好不調に大きな影響を与えていたのです。その影響力は薬による治療力を凌駕するものでした。

からだの状態は、精神的状態で大きく変化するのです。この変化の中心は、「免疫力」「自律神経系の調節力」と概説されています。

「心の状態」が治療に大きく影響を与えることは、医師自身がよく知っています。「がんの告知」をテーマとする医師の姿勢をみてください。「あなたの病名はがんですよ」と告知すると、その人はがっかりとして、その後急速に状態が悪くなることを知っています。だから、がんを告知するべきかどうかについて、医学会の内部でも議論が絶えないのです。

「心の状態にマイナス要因を与えてはいけない」ということを医師自身が知りすぎています。それなのに、医療現場において、その医師が「心の状態」に対して治療能力を発揮できないのは悲しい実情であるといえるでしょう。

「心にダメージが加わり、免疫力が低下した結果、がんの病状が悪くなる」のですから、「免疫力が低下している状態なら、がんが発生しやすい」という仮説も成立します。

免疫力とは、「体内に入ろうとした菌やウイルス、体内で芽生えようとしたがん細胞などの異物を除去する能力」のことです。

ストレスがたまったときや過労気味のときに口唇周囲に「熱の花」といわれる発疹(水泡)ができることがあるでしょう。この発疹などは、ストレスなどにより免疫力が低下して、潜んでいるヘルペスウイルスが活性化した結果の産物であることはいうまでもありません。免疫力が、体調管理に影響を与えることは疑う余地がありません。

発がん性と関係するなら、寿命管理上も重大な問題になります。

免疫力がカバーするのは、ウイルスやがん対策だけではありません。免疫力の低下が、その人の活気、活力、覇気の低下にも関与しているように思います。となると、若々しく覇気ある姿を保ちつづける容姿管理にまで影響を与える可能性を秘めています。
私が、健康管理の三態として重要性をアピールしている寿命管理、体調管理、容姿管理のすべてに影響を与えるのですから、免疫力は健康管理上のまさに重大なテーマです。「免疫力」が、身体の状態に対し支配的になるケースが間違いなく存在します。

免疫力については、メディカルサロンの健康管理指導の現場で、私は漠然とした形で意識してきました。3~4か月に1回、お会いしてからだの状態をチェックしますが、私自身はその会員の「心の状態」を聞き出し、免疫力の状態をチェックすることにも、ある程度気を使ってきています。お顔を拝見した瞬間に免疫力の状態を直感することもあります。その免疫状態により、必要に応じて免疫力増強の手を打つことがあります。

とはいえ、これまでは、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の徹底予防やピロリ菌などの発がん因子の対策、発がんの可能性のチェック、痴呆性疾患の予防を中心テーマにしてきており、免疫力については、漠然とした意識下でのチェックであり、系統だったチェック機構を実施していなかったのも確かです。

メディカルサロンの健康管理指導に、「免疫力」をテーマとする内容を本格的に導入していくときがきたようです。

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