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月刊メディカルサロン「診断」

勇気月刊メディカルサロン2001年6月号

私は生涯独身計画で生きています。「なぜ、そんな妙な計画を考えたのですか」と尋ねられれば、その答えは長いお話になってしまいます。今回はその話には触れません。

私には弟が1人、妹が2人います。つまり4人兄弟で、私が長男です。甥と姪がだんだんと増えてきました。幼い子供達を見ていると、もし私に子供がいたらどんな子供に育てるべきかをふと考えることがあります。

社会人になって悪戦苦闘の毎日を切り抜けて、多くの人たちと知り合う機会に恵まれてきました。高校時代の友人、大学時代の友人、社会人になってからの友人、知人。私の場合、メディカルサロンを開設して、顧問医師スタイルのプライベートドクターシステムを運営している関係上、成功人生を送っている人と多く知り合っています。

私は37歳です。この年齢になると学生時代の友人、知人達が二分化されてきます。人生の先が見えるというか、抱いた大志の虚しかったことを知るというか、とにかく限界を知っておとなしくまとまってしまう知人達。まだまだ人生はこれからが勝負だ、と意気盛んな知人達。
独立起業する人とそうでない人にも分かれます。組織に属して組織の文句を語りながら、だからといってその組織から離れない人と、見事に別離し、独立起業する人。

私が運営するプライベートドクターシステムの会員は独立起業した成功者が500人以上も入会しています。独立起業して、成功人生を謳歌している人たちと、そうでない人たちではいったい何が違っていたのでしょうか。

成功者の学歴が優れているかというと必ずしもそういうわけではありません。学歴の優れている成功者は大企業役員に限られているといっても過言ではありません。成功者の話す経営論が非成功者に比べて特に優れているかいうとそういうわけでもないような気がします。逆に成功者は頭脳明晰であったかというと必ずしもそういうわけではありません。なんとも、どこが違うのかわかりづらいのです。

ところが、最近、独立企業の成功者とそうでない人の決定的な違いを1つ発見しました。「勇気」です。独立企業の成功者は、みな素晴らしい勇気を持っています。高学歴で偉そうなことを口にしながらも組織から独立することのできない人は、腹の奥に宿る勇気が欠けています。

「俺は一生懸命に努力してきた。大きなミスもしていない。信用ある行動にも努めてきたはずだ。それなのになぜ、いまだにこの程度の社会的地位なのだろうか。不満だ。納得いかない」と不遇をかこっている人はいないですか。そんな人は自分の過去をよく思い出してみてください。勇気が欠けていたために、ここという要所で大きくはばたくことができなかったのではないですか。
勇気の有無はその人の人生にとって決定的な違いになっていくのでしょう。また勇気のあるなしは、その人の未来を予想するうえで役立ちそうです。

そんな矢先、柳生十兵衛が残したといわれる「武芸書十八般」のことを知りました。その最終章には次のように記載されているそうです。

「習得して身につけた剣術をイザというときに活かせるかどうかは、その人が持つ勇気があるかないかによる」

一生懸命に剣術を習ったとしても、実際に真剣を握って相手と向かい合ったら、真剣の光に怖気づいて習得したものなど一瞬で忘れてしまい、へっぴり腰で剣を無茶苦茶に振り回すだけになってしまう実例を十兵衛はたくさんみたのでしょう。

どんな子に育てるべきかを考えたとき、迷うことなく「勇気のある子」と結論付けることができました。習得したものを活かす基本が勇気であるとわかったからです。もっとも、勇気と無謀の違いは深く理解しておかなければいけませんが・・・・。

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