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月刊メディカルサロン「診断」

医療制度改革月刊メディカルサロン2001年11月号

「無言の了解」で

ある看護婦さんが言いました。

「脳ドックなんて必要ないじゃないですか。病院に行って、頭が痛い、死ぬほど痛い、と叫んでゴネれば、脳の検査なんていくらでもやってくれるのだから。私のほうはほとんど費用がかからないで検査を受けられるし、病院側はいい売上になるのだから、無言の了解で、検査なんていっぱいやってくれますよ」

その内容は、まとめると以下のようになります。

「ドックという枠で検査を行うと自費になるので費用がかかる。ところが、頭が痛いなどと叫んで、症状をでっちあげれば、検査を保険適応下でやってもらえる。だから、自費負担になる脳ドックは不要である」

別の看護婦さんが言いました。

「先生に頼めば、どんな検査でも保険でやってもらえますよ。保険が通るようにカルテを上手に作ればいいだけなのですから」

あるリハビリテーション病院の看護婦さんは言いました。

「以前は普通の保険点数制度の病院だったのです。そのときは、どんな患者にも院長からの指示で、毎日毎日いろんな検査をやりました。ところが、ある日にマルメの認定を受けたのです。マルメとは、実施した治療内容や検査内容にかかわらず、患者1人につき1日いくらにする、という厚生省が定めた制度です。検査をたくさんしても、薬をたくさん出しても1日の獲得金額は定められています。その日以来、院長からは患者に行う検査の指示がピタリとなくなりました。患者さんにとっていいことなのか、いけないことなのか、さっぱりわかりません」

「姑息な手法ではダメ」

国民医療費が30兆円を前後しています。全サラリーマンは莫大な健康保険料を給料から天引きされて前払いさせられています。この負担は間違いなく家計を圧迫する主因になっています。

国民皆保険制度が誕生した当初は、「これで思う存分にいい医療が提供できるぞ」と医師側はいい意味での意欲にあふれていました。ところが制度の疲弊がすすむ中、「保険医療をこのように利用すればこんなに儲かるじゃないか」という悪習が医療機関内部に蔓延するようになっているのです。不要な治療、不要な検査が医師の独断下で実行できることによる1人あたり医療費の増大、医療費横領などの関連詐欺事件の増加がその蔓延を物語っています。同時に比例的に医療過誤事件が増えています。

つまり、国民や医療従事者に多くのメリットを与えてきた日本の保険医療制度も、制度疲弊がすすみ、医師にとっての都合のいい利権制度と化しているということです。政府は今後、決死の医療構造改革に取り組まなければいけません。受診時の患者負担率を引き上げるなどという姑息手法が決定的な改善をもたらすものではありません。

日本の医学会における、あらゆる権威付け制度から開放され、医師に恩恵を与える保険医療制度も利用せず、圧力を与える団体にも所属せずに、それでいて逞しく成長してきた私が率いるメディカルサロンが、日本国家のために、医療制度の根本的改革のメッセージを発信する機会が近づいているように思います。

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