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月刊メディカルサロン「診断」

2002年は健康教育活動の母体組織を築く月刊メディカルサロン2002年1月号

混乱の中、リセットのきっかけ

昨年は、社会混乱が激しくなにかと騒がしい1年でした。小泉首相と田中外務大臣の国民的大人気による政官界混乱、狂牛病による食卓混乱、テロ事件による国際社会混乱。

多くの悲観的観測がありましたが、プラス思考に考えれば、過去のすべてをリセットして、1からやり直すこともできるという1年だったといえるでしょう。社会がどのように混乱しようとも、私は自ら思い定めた生涯テーマを追及するのみですから、メディカルサロンは何の影響も受けていません。

リセットという語を心に刻んで振り返ってみると、10年前にメディカルサロンを開設することになったきっかけを思い起こします。当時から「説明不足」「インフォームドコンセント」「検査づけ」「薬づけ」「3時間待ちの3分診療」「医療費増大続く。健保組合赤字化」などをテーマとして医療現場が混乱していました。

慶應病院の外来を担当しながら、その混乱の原因を追求した結果、最深層には「医療、健康、人体構造、各臓器の役割、病気のメカニズムについて、患者の知識が極端に不足している」という問題が潜んでいることに気づきました。そして今後の日本社会の課題の一つとして、「純粋医療のあり方の問題だけでなく、介護などの傍医療的問題も今後は重大化してくる。身体の問題は生涯の問題である。にもかかわらず、その内容について一般の人たちは系統的に学ぶ機会が与えられていない。算数や国語をあたりまえのように学ぶように、身体のことに関しても、あたりまえのように学習する場がなければいけない」ということがクローズアップされることを思い描きました。そして、まずは医学、人体のことに関する小さな家庭教師的活動をはじめようと決心し、メディカルサロンが誕生したのです。

人体の知識不足の深刻さ

健康教育の必要性は、その後ますます高まっているように思います。

健康保険制度の抜本的見直しが要求される大きな原因として、高齢者の増加だけでなく、40年近く貢献した同制度の疲弊もあげらていますが、その制度の疲弊は、医師側の収益的思惑と患者側の知識不足により加速されたことは間違いありません。

今でも、医療現場で医師と患者が言葉を通じ合わせるのは困難です。専門的知識の格差が大きすぎるのです。高度な内容だけでなく基礎的な内容でも格差がありすぎます。副腎皮質ホルモンという語がマスコミでよく騒がれているのにもかかわらず、ほとんどの人は「副腎」という臓器が体内のどこにあるか知りません。人体のことに関する極端な知識不足状態では困るのです。

医療現場の状況は、―「株」が何かしらないのに証券会社を訪れて、「株価収益率」とはなんですか?―と尋ねているような姿を想像すればわかりやすいと思います。「説明不足だ」と患者側はクレームをつけますが、説明を理解できる基礎知識が根本的に欠如していることもまた事実なのです。

社会への新たな提案

その現状を打開するために、私はこれまでセミナー新聞、雑誌書籍、会報誌などで小さな健康教育に力を注いできました。

しかし、健康保険制度存続の危機を間近に控えて、小さな健康教育では間に合わなくなってきました。今年からは国家全体のことを考えて行動しなければいけません。

そこで、今年は、非営利活動法人(NPO)として、「日本健康教育振興協会」を設立し、それを母体としていままでの活動、成果を統合し、より大きな社会貢献の道を模索していこうと思います。まずは義務教育、高等教育、大学教養課程、成人に、人体のことを系統的に学ぶ機会の提供を提案していきます。初心貫徹の意思も新たに、リセットされた日本社会を突き進んでいこうと決意する次第です。

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