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風本流医療構造改革・論議編

その12「メディカルサロン型クリニックのあるべき姿」

医療社会三分割

私が主張している医療構造改革の要点は、医療社会を三分割することです。その1つを「メディカルサロン型クリニック」と名づけています。他の2つは、「従来型の健康保険適応の医療機関群」と、「会計不要の国営病院」です。国営病院といえば、国立がんセンターなどを思い起こす人がいるかもしれませんが、私が主張しているのは国家直轄の医師群を配置した医療機関群です。この医師群には、最終救急医療や生活保護者への医療、僻地医療を担当してもらいます。「最終救急医療」とは聞きなれない言葉かもしれませんが、これは後に説明します。
私が創業したのが「四谷メディカルサロン」ですから、「メディカルサロン型クリニック」という名称はやや手前味噌に見えるかもしれませんが、他に適当な名称がないのでそのようにしました。ご了承願いたいと思います。

健康保険を使えない、使うべきでない医療とは

このメディカルサロン型のクリニック群は、健康保険を使えない、あるいは使うべきでない医療を担当します。健康保険を使えない医療と言えば、外国で使われている抗がん剤で日本ではまだ認可されていないものなどを連想する人もいますし、美容外科的なものを連想する人もいます。しかし、皆さんがうっかり忘れているのは、「健康教育を実施する医療」も健康保険が使えないということです。メディカルサロン型クリニックは、「健康教育とそれから派生する健康管理指導、およびその実践医療」を執り行うクリニックであると認識していただければいいと思います。また、このクリニックは難しい病気に出会った際に、患者側の立場に立って、現に治療する病院との交渉にあたるという役割も持っています。

価値観の多様化に伴い、患者たちが健康保険適応病院では解決できない不平、不満を持つようになりました。その状況を受けて、平成4年に四谷メディカルサロンを創業したのですが、この運営内容は社会に受け入れられました。経営困難期であった最初の3~5年を乗り越えたあとは順調に成長し、そこで執り行った医療の一部を紹介する書籍を執筆、同時に組織も飛躍し、創業後12~13年たった頃からは、日本中の主要都市にメディカルサロンができました。

政府の誤解、誤認、曲解により、現在、四谷メディカルサロン以外は閉鎖されましたが、私の中にすべてのノウハウが詰まっていますので再興は容易です。すでに一度成し遂げたことですので、その気になれば経営効率性をさらに高めた状態で、あっという間に再現することができます。つまり、医療社会三分割の一方面は、私に健康体と意欲があれば必ず実現できるのです。社会状況を見極めて考えていこうと思っています。

プライベートドクターシステム

創業時以来、四谷メディカルサロンの運営の主体は、一貫してプライベートドクターシステムというものでした。その内容に関しては、一言では「顧問医師が会員の生涯の健康を守る」と表現されています。もう少し具体的には、「会員と医師との生涯の友誼関係を通じて、会員に起こることが予想される健康トラブルを未然に防ぎ、健康トラブルが起こったときは、既存病院を利用してともに対処する」と表現できます。
この表現を聞くと、その内容がわかったような、わからないような不思議なものですが、とりあえず、何か良さそうなものがありそうな気がします。そういうイメージがありましたので、平成10年ごろからは、四谷メディカルサロンを真似たクリニックがいくつかできたようですが、それらは経営的にほとんどうまくいきませんでした。いつのまにか、ただの人間ドック化していきます。

やや才能のある医師がメディカルサロン型クリニックを開業しても、なかなかうまく運営できないのです。その底辺に潜む違いは何なのでしょうか?私には明確にわかっていますが、それは経験がないと理解しがたいことですので、現段階では語るべきではないと思っています。しかし、医療社会三分割をすすめるためには、この分野に従事しようとする医師が必要ですので、そのヒントになるように創業以来の局所的な転機となる出来事はいずれ述べていくことにします。

メディカルサロン型クリニックの役割

さて、メディカルサロン型クリニックが、医療社会の中で果たさなければいけない役割を述べていきましょう。いうまでもなく、健康保険を使えない医療、使うべきでない医療になりますが、それらは

  1. 健康教育
  2. 健康管理指導
  3. 難しい病気の際の病院との交渉、調整
  4. 健康保険の監視
  5. 健康保険適応除外の受け皿

の5つに集約されます。簡単に説明してみましょう。

1)健康教育

一般に診療現場の問題点の一つとして、説明不足が挙げられ、患者側のストレスの一因となっています。実際に、しっかりとした説明があれば患者の不安が解消され、薬が不要になるという患者が大勢います。しかし、一般の健康保険診療の病院の診察室で十分な説明をすることは不可能であると諦めるべきです。医師にその説明を強要すると診療現場での医師側のストレスが高まってきます。健康保険医療の最大の弱点であると認識しなければいけません。
また、説明を望む患者と望まない患者が明確に分かれ、説明を望む患者も各個人ごとに知的レベルには差がありますので、説明の仕方、要する時間が個別化され、健康保険医療における公平の原則にも反します。健康保険医療の現場では、患者が納得する説明ではなく、医師側が自己満足する程度の最低限必要な説明を義務付けるのがよろしいです。患者側はその説明で満足すればそれでよし、不満であるならメディカルサロン型クリニックに行って説明を求めればいいのです。

今受けている治療の説明をメディカルサロン型クリニックで、「その治療を選択した医師の腹の内」なども含めて解説してもらうことになりますが、ここでは「説明」などというレベルではいけません。それを包含する健康教育でなければいけないのです。
教育は、「主体性を与え自立してもらう」ことを目的とします。つまり、その患者が通院している健康保険診療病院においては、治療計画に関して患者側が提案、担当医がその提案の可否を判定しアドバイスを付加するといったスタイルへと進化できるように、サポートしていくことを目的・目標とするのです。

一方で、系統的教育も必要です。前記したのは自己が出会った健康トラブルを端緒とする健康教育ですが、日ごろから「人体、医療、健康、病気」に対する教育も必要になります。それを目的として、私はNPO法人を設立し、健康管理指導士認定講座を開設していましたが、これも政府、マスコミの曲解により今はお休み中です。近い将来、「健康管理学検定」として復活させる予定です。メディカルサロン型クリニックは、この健康管理学検定を受講する生徒に対してセミナーや勉強会を開催する場にもなります(この目的で、かつて各地に設立したメディカルサロンにはセミナールームを設置していたのです)。

健康教育が具体的にどうあるべきかに関しては、奥が深くなりますので、詳細説明は後の機会に譲ります。ここでは、メディカルサロン型クリニックにおける健康教育の目的、意味合いを深く認識してください。

2)健康管理指導

現時点で、健康保険上の病気にかかっていない人に対する医療というのは健康保険の対象になりません。「病気でもないのに医療が必要かな?」と言う気分になりますが、たとえば、健康診断や人間ドックなどは、病気でない人に執り行っている医療の代表格ですし、疲労回復力を高めることなども立派な医療です。つまり、病気の治療ではないけれど、元気で長生きをしたいという望みを満たす医療が必要になっています。

  • 「心臓病が心配だ」
  • 「一族にガンが多いのでガンを予防したい」
  • 「つかれやすい」
  • 「頭がさえない」
  • 「体力をつけたい」
  • 「体重を減らしたい」
  • 「皮膚をつややかにしたい」
  • 「両親がアルツハイマー病になっている。私は予防したい」

などの望みに応える医療、それが健康管理指導です。
健康管理は、寿命管理、体調管理、容姿管理の三態に分類されます。

寿命管理は、とにかく長生きしてもらうことを目標とします。それを支えるのが「予想医学と先回り予防」です。体質診断や脂肪診断、遺伝子検査、画像診断などの予防医学をフル動員して、将来の健康リスクを予見し、集中的な予防策を立てる医療です。

体調管理は、「年をとっても頭脳明晰で、自分の足でどこにでも行けて、疲れを知らず、意欲高らかで体調絶好調」を目標とします。その内容は4つに分類されます。

  • 「疲労回復力向上」
  • 「知的能力向上」
  • 「身体能力向上」
  • 「意欲向上」

を目的とします。

容姿管理は、若々しい姿作りを目的とします。この手法論も進歩していますが、メディカルサロン型クリニックでは、美容外科的手法は用いません。体調管理と容姿管理を支えるのは、容姿、体力、意欲の回復医学です。この医学をフル活用するのです。

3)難しい病気の際の病院との交渉、調整

手術で取りきれないガンなどでは、治療手法が難しくなります。また、実態が解明されておらず治療困難な「難病」といわれるものもたくさんあります。それらに対しては治療のマニュアルなどがありますが、実は患者ごとの個別の問題になると、どのような治療が最善の選択なのか医者側もよくわかっていないのです。この治療を施せばどうなるかが明確でなく、医師側も不安なのですが、患者に説明するときは、きっぱりと説明せざるを得ません。
何も治療しないわけにいかないので、抗がん剤投与でもするか、というぐらいの感覚であることも多いのです。確信を持った治療というのは極めて稀です。しかし、一方では、「こんな治療を行ったら、どうなるのだろうか」という強い関心を持っているのも医師側の本能です。

患者側も治療を施されなくなったら、見捨てられたような気がして絶望的になります。何かの治療を継続し、病気と闘っているというスタイルにしたほうが、安心感が得られます。しかし、その治療は、本当に効く治療なのかどうか、誰も確信を持っていません。他の治療のほうがいいかもしれません。あるいは、特異的免疫強化療法など新しい治療の話も耳に入ってきたりします。
そんなときには、今後の治療のあり方に関して、対極的な立場からの考察が必要です。データづくりと経験蓄積を兼ねて治療をすすめたい医師の立場と、残りの余生を最大幸福で過ごしたい、不安だけは解消したい、あるいは、あわよくば完治させたいという患者側の立場は、かなりの部分で相反します。治療の手法で相反するのではなく、別の次元で相反するのです。

今までは、専門家である担当医の思惑通りに治療をすすめることになるのが現実でした。しかし、メディカルサロン型クリニックは、患者側の立場に立って、治療する担当医と交渉し、治療のあり方を調整する役割を果たすことができるのです。

4)健康保険医療の監視

健康保険には大前提として保険適応という問題があります。健康保険の原資は多くの人が負担していますので、それを利用するにあたっては、健康保険を「利用していいケース」と「利用してはいけないケース」の峻別が必要です。これをあいまいにすると、医療費が増え、現役世代の不本意な負担増につながります。健康保険医療というのは、非営利組織の原則に則って、過剰診療を避けて必要最小限医療を提供して、それでいて医療機関が経営的に成立することが制度の絶対必要条件なのです。過剰診療を実施せざるを得ない状況は打破しなければいけません。

私がメディカルサロンを運営する中でも、「あのクリニックに行ったら、プラセンタ注射を健康保険で打ってくれるんですよ」と語る人に多く出会ったものです。もちろん、プラセンタ注射は肝臓病の治療薬ですから、肝臓病の人には健康保険で治療できますが、そうでなければ利用することはできません。そのクリニックは裏側で、「では肝臓病ということにして・・・」と処理しているのです。また、人間ドック代わりに健康保険を利用している悪質なケースもあります。このような健康保険詐欺まがいのものが、あちこちに存在します。私の手元にはその医療機関のリストがあったぐらいです。これらを放置しておくことは、医療組織の成長を促す上で望ましくありません。

これを監視する機関が政府内に設けられていますが、絶対的に不十分といえます。現場の医師の仕事は現場の医師に監視させるほうがいいのです。健康保険を扱えない医療を担当しているメディカルサロン型クリニックは、健康保険を不適正に利用されると自己の領分を侵されたことになりますので、本能的に健康保険の適正利用に関して強力に監視をしていこうとすることになります。つまり、ある意味で、従来の健康保険病院とメディカルサロン型クリニックは、利害相反の部分を持ちます。この役割を見逃してはいけません。

5)健康保険適応除外の受け皿

かつては、コレステロール250mg/dl以上が健康保険適応の基準となっていました。それがいつのまにか、220mg/dl以上と定めら、最近では、200mg/dl以上にしようという動きもありました。つまり、基準値を変更して患者を増やそうとする動きが、健康保険を扱う医療機関群の内部に存在するのです。
「この数値になったら危険だよ」というものと、「健康保険で治療できる」というものを明確に分けなければいけません。「危険だよ」というものに対しては、健康保険適用下で医薬品を使って治療するのではなく、健康教育による治療が第一選択です。

その「健康教育による治療」を実施するのがメディカルサロン型クリニックの役割です。ある患者に対し健康教育による治療の限界があったときに、はじめて、メディカルサロン型クリニックが健康保険診療の病院に紹介し、健康保険適用下で治療するという流れを作ることも医療社会には必要です。
今後の健康保険制度の流れは、保険適応を狭めていく傾向にならざるを得ません。今のままでは、適応外とされた従来の患者が行き先を失うことになりますが、その受け皿としての役割をメディカルサロン型クリニックが果たしていくのです。
これらの役割は、医療社会の未来を考えると、実に重要な役割であることが徐々に理解されてくると思います。

メディカルサロン型クリニックは以上のような役割を果たします。このタイプのクリニックを日本中に普及させることは夢物語ではありません。私が日本の主要都市にそれらを目的とするクリニック群を作り、順調に運営してきた実績からも証明されています。近い将来、私が主導してこのクリニック群を作ることになるかもしれません。この分野に志を持つ医師が参集してくれることを期待しています。

【論議編12補足:ダイエット指導】

健康管理指導の一環として、メディカルサロン型クリニックではダイエット指導を行っています。医療機関ですから、医療用食欲抑制剤である「マジンドール」を利用することができ、その手法はマジンドールダイエットと名づけられています。

このマジンドールダイエットは、「薬の力でやせさせる」という目的ではなく、「食べなければやせる」という健康教育(ダイエット教育)を実践経験により体得してもらうことを目的としています。この目的においては、利用する医薬品量は最少量で、それでいて生涯の体重管理に極めて示唆的な経験をすることができます。
かつて、私が運営するメディカルサロンには、2009年5月までに7337人がダイエット指導を求め、その中で、2767人がマジンドールダイエットを希望、診察・検討した結果、実際にマジンドールを処方した人は1912人でした。その経験の中から、健康教育にマジンドールを利用するというスタイルが完成したのです。

メディカルサロンは、エステティックサロン、美容院、整体院などの「顧客とスタッフが長時間接する施設」を健康教育の実施拠点とする事業に取り組んでいました。その事業方針に付随したものとして、マジンドールダイエット希望者の紹介ネットワークが築かれていましたが、そのネットワークに対し「マジンドールを不正販売した」と近畿厚生局麻薬取締部が誤認して強制捜査を実施、その誤認を正当化させるためにメディカルサロン事業を強引に曲解し、悪し様な姿に歪曲させてマスコミに伝え、マスコミが盲目的にそれに追従しました。記憶に留められた事件です。

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