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風本流医療構造改革・論議編

その14「健康保険の事業仕分け」

健康保険の事業仕分け

私は、医療社会を三分割するべきだという意見を持っています。その内容はこれまで語ってきていますが、この論議編14では視点を変えて、政府の事業仕分けに絡めて語ってみます。

政治問題としては、政府が取り組んでいる事業に対する資金配分の検討会、いわゆる事業仕分けが盛り上がりました。「表舞台に引きずり出されることはない」と油断していた部分が、表ざたにされて、関係者らはさぞ困ったことでしょう。
それを見ながら、「ああ、事業仕分けにかかった各事業に比べると、健康保険制度の32兆円はずば抜けて大きな数字だったのだなあ」と改めて思ったものです。この健康保険制度を事業仕分けにかけたら、いったいどうなることでしょうか。

もしも、事業仕訳にかかったら・・・

舌鋒鋭い女性議員の声が響き渡ります。

  • 「その人は、もう死ぬと分かっているのでしょ。それなのに、そんなに費用をかけて、延命させる必要があるのですか?その費用は公費ですよ。公費でなければ家族の希望で好きなようにすればいいですが、あなた方が使っているのは公費ですよ。そのことが分かっているのですか?」
  • 「そのガンは、その治療で本当に治るのですか?あなた方専門家は、結局は治らないと分かっているのでしょう。それなのに、なんでそんなに公費をかけてまで治療しようとするのですか?しかも、最も公費が高くかかるような治療を選択しているのでしょう」
  • 「そのガンが治るならどんなに費用がかかってもいいと思いますよ。でも、治らないだろうということが分かっているのに、そんなに公費をかけていいのですか?治らないだろうと分かっているガンに対しては、公費でない治療費負担システム、つまり民間保険の導入を検討しようとは思わないのですか?」
  • 「その人の不摂生が原因で、その人はその病気になったのでしょう。しかも、その不摂生は、以前から医師に改善しなさいと指摘されていたのに、改善しなかったのでしょう。それなのに、その人の治療に多額の公費を使っていいのですか?」
  • 「ちょっとした風邪に対して、莫大な治療費をかけていますね。そんなに治療費をかけないと、その風邪は治らないのですか?」
  • 「その寝たきり患者の頭部CT検査を毎月撮っているようですが、その検査の結果で、治療の方針が一度でも変わったことがあるのですか?」
  • 「毎回、診察を受けているわけではないのに、毎回診察料が発生しているのは、どういうことですか?」
  • 「生活保護を受けている人の1人当たり医療費がなぜ、そんなに大きいのですか?」

それらの声は、聴衆の肺腑にこだましていきます。

同じ事業仕分けを介護保険制度に対して行っても、その議員は、「家族が介護すればいいだけでしょう。公費を使ってまで介護にあたる必要はどこにあるんですか」とは決して言わないと思われます。おっと、横道にそれたことはここでは話しません。

その日は必ず来る

「専門家でない者たちに何が分かる」という姿勢で臨む医師会に対抗するのは難しいようで、健康保険使い放題の医療社会が成立しています。その使い放題が、医療社会を進歩させるなら誰も不満を持たないでしょう。医療社会の進歩に「?」の部分があるから、問題視される日が必ず来るのです。その日が来ない、と思っているなら、医師会はかなり油断していることになります。
健康保険の事業仕分けとして、ターゲットになるのは、「予防医学」「末期医療」「ガンの治療」「生活保護世帯などの治療費全額公費負担の医療」になるのは明白です。ついでに、この事業仕分けを行うと、私が主張する「医療社会三分割が必要になる」という方向に進むことになります。

問題は、その事業仕分けを行う場合、専門家である医師集団に、仕分け側で誰が対抗するかという点になります。医師集団の専門知識を撃破し、巧みな大義名分論を説破しなければいけません。そんなことができる人はまずいないと思われます。が、「もしも」の話ですが、その席に私がいれば、事情を一変させることが可能です。しかし、今の私は、天下国家のためにそこまでしてあげよう、という気持ちは失っていますので、新しい若手の医師が誕生するのを待つばかりです。

ただし、理想的なのは、「その日が来ない、と思っているなら、医師会はかなり油断していることになります」という私のメッセージを受け止めて、医師会が自ら改善の指針を立てて、その実現に乗り出してくれること、であるのは言うまでもありません。

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