HOME > 風本流医療構造改革・論議編 > その19「新しい医療の創設」

風本流医療構造改革・論議編

その19「新しい医療の創設」

四谷メディカルサロンは、[3]の医療体系作りのために研究を深めてきました。その研究の中から、「予想医学と先回り予防」「ダイエット医療」「容姿、体力、意欲の回復医療」「プラセンタ医療」」「成長ホルモン医療」「遺伝子検査による予防医学」「疲労回復医療」「子供の成長を見守る医療」などの医療体系を誕生させました。これらの分野の医療は、閉鎖された医師社会の医学界で育てるものではなく、一般の人たちと多くのコミュニケーションをとる中で築き育てるものである、という信念のもとで、研究開発されてきました。
開発された医療体系の中で、ダイエット医療やプラセンタ医療、成長ホルモン医療などは、広く日本中のクリニックに普及しました。

この[3]の分野の医療を充実させ、後世へのレールを敷くためにメディカルサロンは今も、研究活動を続けています。

従来の医療

医療の原点は、病気になった人を治療することです。痛い、痒い、苦しいなどの症状を訴える人を治療しようと試みるのが医療の始まりです。長い年月をかけて、この「病気を治療する」という医療は進歩してきました。この医療は5つのステップを持っています。何かの症状を訴える人を見たら、まず「診察を行い、病名を予想する」という第1ステップ、「検査で病名を確定する」という第2ステップ、「治療の方法を考える」という第3ステップ、「治療を実施する」という第4ステップ、「治療の成果を確認する」という第5ステップです。その各ステップが、2000年以上の長い年月をかけて、進歩してきたのです。近年の科学技術の進歩は、第2ステップと第4ステップを飛躍させたのは言うまでもありません。

この旧来からの医療に対して、1970年代から、「早期発見、早期治療」を合言葉に、予防医学が芽生え、進歩しました。進行すると確実に命を奪うガンや、脳出血の原因となる高血圧、動脈進行の原因となる高コレステロール血症など、「症状が乏しい、あるいは、症状がない」病気を出来る限り早く発見して、治療に取り組もうとする試みです。これはなかなか奥が深く、手術で取りきれる段階でガンを発見することや、見過ごされていた高血圧や高脂血症を発見することには大きな意義があります。一時は、近藤誠氏の「それでもガン検診、受けますか」などの批判もありましたが、胃ガン、肺ガン、大腸ガン、肝臓ガン、すい臓ガン、子宮頸ガン、前立腺ガン、食道ガン、膀胱ガン、腎臓ガンなど、早期発見のおかげで助かった人が大勢いるのは、まぎれもない事実といえるでしょう。ヘリカルCTやPET検診などの導入により、早期発見をより行いやすくなりました。

これらの大きな2つの医療~「病気を治療する医療」と「早期発見早期治療」~が、国民医療費のほぼすべてを占めています。

それらに次いで、「自分の容姿に不満を持つ」人を対象として、美容外科系の医療が進歩しました。この医療も、「人生を楽しむ」という意味で大きな意義を持っているのは間違いありませんが、ここではその詳細は語りません(というより、私が自らこの分野に従事したことがないので、語れません)。また、不妊治療も大規模化していますが、それもここでは語りません。

新形式の医療

さて、それらの従来知られた医療に対して、さらに新しい医療を誕生させ、進歩させなければいけません。それが、「病気にならないように指導する医療」です。現時点において、健康で元気な人を対象として、その人が病気にならず、元気で若々しいまま、80歳、90歳、100歳を迎えてもらうための医療です。私はそのタイプの医療を「健康管理指導」と名づけています。

このように語っても、漠然として何のことだかわからないというのが実情で、「そんな医療ってどうすることなの?」という質問が出てきます。確かに、曖昧でどのような医療なのかピンと来ません。しかし、多くの人が、「その医療は必要だ」と思っています。病気になる前の医療、病気にならないようにお医者さんに診てもらう・・・いったい、どんな医療なのでしょうか?
私は、それを具体化させ、学問化させるために20歳代後半から、今までの人生を費やしてきました。そのエッセンスを語ってみましょう。

健康管理指導という医療・・・健康管理学を土台として

なぜ、漠然としているかというと、「目標」がないからです。「病気を治療する」という医療には、「病気の苦痛を取り除く」という目標があります。「早期発見、早期治療」には、検査を行いその結果そのものが目標です。しかし、「病気にならないようにお医者さんに診てもらう」の医療には、目標が見えてきません。だから、漠然としており、学問化の第一歩を踏み出せなかったのです。そこで、私はその目標設計を検討しました。

熟慮を重ねた結果、行き着いたのが、

「90歳を超えても頭脳明晰で、自分の足でどこにでもいける。痛い、痒いがなく、体調絶好調で意欲もあり、見た目の姿は50歳」

という目標でした。その身体を実現するために、今の年齢からどのような取り組みを行っていくべきかを考えれば、その医療体系がおぼろげながら見えてきます。

その目標を満たすには、さしあたり3系統の取り組みが必要になることがわかってきました。1つは「死ぬような病気にかからず生き抜くこと」、次の一つが「痛い、痒いがなく、身体機能、知的機能に優れ、体調絶好調で意欲あふれること」、最後の一つが「若々しい身体を維持すること」になります。それぞれの医学的手法を研究していくことが、この学問=健康管理学の創設ということになり、その学問に基づいて、実践指導していくことが健康管理指導ということになります。そのような観点から、私は「健康管理学に三態あり。すなわち、寿命管理、体調管理、容姿管理である」と説いてきました。
この学問を築くためには、医師側に一つの前提条件が生まれます。それは、医師と一般の人たちが日常生活的に深く交流し、その中からその学問を築いていくということなのです。

医師というのは独特の閉鎖社会を築いています。病気の治療学はこの閉鎖社会の中で研究され、展開されています。「病気の治療」という医療は、医師が主体者であり、患者は「物体的存在」になります。しかし、健康管理指導は、患者(依頼者)が主体者となり、医師はアドバイザーとなります。しかし、医師には、主体者となる「一般の生活者」の心を容易に理解できない部分が多々あり、そこを深く悟らない限り、この学問を大成させていく事はできないのです。つまり、健康管理学という学問を進化させるためには、一般の人々と交流を広めて、人心に深く触れ、人々の生活体系、思惑、人生観を深く悟っていなければいけません。健康管理学は、医師の中で築くものではなく、一般の人たちとの触れ合いの中で築いていくものなのです。
余談ですが、最近の私は、「交流」をテーマとして、ゴルフに取り組んでいます。たった一人でゴルフコースに出かけて、そこで初めて出会う人と交流を深め、私が医師であることさえ知らない人から、「人生観と健康、身体」に関する様々な話を聞きだし、学問化の次のステップを研究しているくらいです。

このタイプの医療を実践する場として、私は「クリニック」の称号を放棄し、「メディカルサロン」という名称を創設しました。平成4年に築いた四谷メディカルサロンがその第一号です。四谷メディカルサロンは会員制とし、「医師と会員の生涯の友誼関係」を土台として、日々の医療相談、健康相談に応じながら、寿命管理、体調管理、容姿管理の3つを指導していく診療所として誕生したのです。店舗構造の特徴は、待合室、診察室、処置室、事務エリア以外に、「サロンスペース」を設け、来院者と医師が日常的に交流を深められる工夫を設けたことです。成長過程においては、ダイエット医療、容姿、体力、意欲の回復医療、子供の成長を見守る医療、遺伝子予想医学など、健康保険で実施できない多くの派生医療を生み出してきました。

健康管理指導には検査と健康教育とサプリメントと健康管理転用型医薬品が必須

さて、この健康管理指導という医療を実践するのにあたって、絶対必須なアイテムが生まれてきます。それが「検査」「健康教育」「サプリメント」「健康管理転用型医薬品」です。

■検査に関して

ガンの有無を調べる「早期発見」は、検査によりなされるのが当然ですが、長生きしてもらうための「寿命管理学」においては、検査内容を早期発見よりさらに一歩進めることになります。寿命管理学の基礎的な土台は、心筋梗塞、脳梗塞、胃ガン、肺ガン、大腸ガン、肝臓ガン・・・などの命にかかわる病気のそれぞれに対して、「その病気にかかりやすい身体」「その病気にかかり得る身体」「その病気にかかりようがない身体」と身体を3分類することなのですが、それは採血や内視鏡、各種の画像検査などの検査によりなされるのです。その一連の過程を私は予想医学と名づけています。この予想医学は遺伝子医学の導入によりさらに進化しました。

  • 「あなたが、毎日お酒を飲むと、70歳前後で食道ガンが必発です」
  • 「3年以内にすい臓ガンが出てきそうです」
  • 「サウナと水風呂に交互に入ると心臓に異変が起こる遺伝子構成をしています」
  • 「過労時に、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症が起こりやすい身体になっています」
  • 「今現在、動脈硬化が急速進行しています。対策として、○○してください」

などの指摘ができるようになったのです。

その検査の項目と評価の仕方、説明の仕方、改善の仕方を日々進歩させ、各病気に対して依頼者を「その病気にかかりようがない身体」へと指導していくことが、まさに寿命管理学の成長に他なりません。

■健康教育に関して

健康管理指導は、依頼者を主体者にすることが基本になります。医師が主体者として患者を言いなりにさせる、あるいは命令調に説いていく医療ではなく、依頼者が主体者で医師はアドバイザーの立場という医療です。この主客転倒的な状態を確立するためには、患者に対する健康教育が必須になります。具体的には、身体の仕組みや病気のメカニズム、医薬品の作用メカニズムを理解してもらい、その上で、自己の信条下における自己の判断を主として、それを補佐する形式で健康管理指導を展開しなければいけません。そういった健康教育を進めていくためには、奥深い工夫に彩られた研究の歴史が必要です。この分野の手法に関して、特に私は執心して来ました。この部分を築くためには、人々との交流を深めて、人心を知らなければいけません。そして、私はその活動の中できわめて優れたノウハウを確立してきたつもりです。

私が執り行ってきた医療と同じような医療を実施しようとする医師はたくさんいますが、この部分で決定的に劣っているため、検査設備だけを備えてその設備で依頼者を魅了しようとするだけの「検査クラブ」と化し、十分な成功を収めることができていません。「この部分」を伝授していくことが、今後の私の活動の主軸になるかもしれません。

■サプリメントに関して

健康食品には、「元気を出す」などを目的として、『にんにく卵黄』『スッポンの卵』などいかにも効きそうなもの、逆に怪しげなものも幅を利かせています。しかし、一方では食生活が原因となって増えている病気があることも事実です。身体の改良には、食生活の改善も絶対必要なことが多く、たとえば「魚が嫌いで食べられない」という人に「魚を食べてください」といっても通用するはずがなく、その場合には、「では、このサプリメントをとるようにしてください」と指導するケースが多々出てくるのです。
つまり、人それぞれに生活信条があり、食べ物の好き嫌いがありますので、「押し競饅頭」のような指導ではなく、その人の嗜好性に合わせて柔軟な指導体系が要求されます。それに際して、サプリメントの利用が必須なのです。

この分野に医師が進出して、学問的裏づけをもとに依頼者の身体状況に応じたサプリメントの使い方を指導する医療を完成させ、新しい医療体系の一環に加えていかなければいけないのです。「診療現場において、サプリメントの利用は望ましくない。なぜなら、営利行為に該当するからだ」と語る医療関係者がいるようですが、とんでもない錯誤であることを付け加えておきます。

■健康管理転用型医薬品に関して

医師が処方して利用する、いわゆる「処方せん医薬品」は、病気を治療する目的で開発されたものであり、効果の確かなものが大半です。その処方せん医薬品の中には、健康管理分野で利用できるものが多々あります。血小板凝集抑制のアスピリン、EPA体質を作るためのEPA製剤(エパデール)、疲労回復・乾燥肌改善のラエンネック(プラセンタ注射)、意欲回復効果の強い成長ホルモン、ダイエット指導の一環としてのマジンドール、栄養バランス不良時のノイロビタン、高齢者の運動時息切れを改善するノイキノンなどは、健康管理指導の際によく利用されます。勃起不全治療薬のバイアグラ、レビトラ、シアリスや、脱毛症治療薬のプロペシアなど、もともと病気とは言い難い分野の治療薬も頻用されます。

医師による健康管理指導という分野では、それらの医薬品を利用できることが大きな長所になります。病気の治療のように医師が主体者として患者に絶対命令下で利用させる手法とは異なり、依頼者に医薬品の利用方法をよく教育し「依頼者を主体者、医師がアドバイザー兼見張り役」となる形式へと進化していくのも大きな特徴です。

終わりに

私は、医療社会を三分割する必要性を説いていますが、そのひとつである「メディカルサロン型クリニック」が、この医療を実践する活動母体になるのです。四谷に最初のメディカルサロンを築いてからは、この「病気になる前の医療」を求めて、日本中から受診希望者が集まりました。遠方からお越し頂くのは申し訳ないという発想から、日本中に往診出張拠点を設け、この拠点はやがて診療所として完成しました。社会的な需要はそれほどに大きな医療といえますが、問題はその医療を実施できる医師が育っていないことです。医療社会が成長するために、この分野を専門とする医師が育つことを期待します。

また、このメディカルサロン型クリニックが日本中に増えると、予防医学分野における健康保険適応(高コレステロール血症など)を減らすことができ、健康保険のあり方が少部門精鋭的に改良されていくのは間違いありません。

前のページに戻る