月刊メディカルサロン「診断」
世紀の大発見!!ぎっくり腰の特効治療・・・コルヒチン
掲載日2025年6月3日
月刊メディカルサロン7月号 医師の皆さん、検証してください。
私は、昨年(令和6年)と一昨年に計4回のぎっくり腰を発症しました。ただし、初めて発症したのは6年前の令和元年です。つまり、令和6年までに5回のぎっくり腰を経験したのです。ぎっくり腰経験のベテラン入りです。ぎっくり腰は、医学的には急性腰痛症と言われますが、この稿では「ぎっくり腰」で統一します。
初めて発症したのは、職場の家具を移動させているときでした。「あれ、なんか腰が痛いなあ」という感じでした。荷物を運び続けましたが、じわじわと痛みはひどくなり、しばらくすると前かがみになれなくなりました。ちょっと腰を前傾させるとビクンと腰に強烈な痛みが出ます。身体を地面に垂直にしたままでないと、立ち上がれなくなりました。
「あ、これがぎっくり腰というのかな」
と気づくのに、多少の時間がかかりました。発症して数時間後には、ベッド上でもう寝た切りです。立って動き回ると強烈な痛みが出ますので、立ち上がれません。トイレが大変でした。便器に座って力むことができません。便器から立ち上がるにも一苦労です。鎮痛剤もそれほど効きません。ベッドから起き上がるのも、いったん体を横に向けてベッドの端から脚を下ろして腕の力で立ち上がるという感じです。
上記の話は、ぎっくり腰の発症経験がある人にはすぐに理解できると思います。「身体を動かせなくなるこの痛み、経験しないとわからないものだなあ。治るのを寝て待つか」と、悠長に構えることにしました。ぎっくり腰であるとわかれば、安静にして数日後に軽快するのを待つしかないのは当然知っています。患者に話していたことですが、自分が経験することになって、初めてその実体がわかりました。そして、安静を続けることのつらさもわかりました。
「自分が経験しないと真にはわかっていないものだなあ。自分が経験していない病気を患者に語るときは慎重にならなければ」と、痛感したものです。
さて、このぎっくり腰、令和5年、6年と立て続けに4回発症しました。思い当たる原因は、体重が5kg以上増えたことです。やはり、体重管理は健康管理の基本です。
ぎっくり腰といえば、西洋では「魔女の一撃」といわれています。何かのきっかけで発症すると、同時に強烈な痛みが襲ってくるというイメージがありました。しかし、私の場合は、発症すると同時に「あれ」と思う痛みが発生してそれがじわじわと強くなり、4~5時間かけて強烈な痛みになり、丸1日後にピークを迎えてそのピークは2日間持続し、そこから3~4日かけて自然に和らいでくるというものでした。
自分の実感としては、骨そのものに異変が発生したという感じではありません。腰部の筋肉そのものの痛みに感じます。あるいは、筋肉を取り巻く膜、つまり筋膜の痛みや炎症のような気がするのです。その実感から、「腰部の筋膜に何かの異変が起こり、そこから発症する痛み」と、いつの間にか私の中で定義づけていました。
令和6年の夏、私は昼にビールを飲んで長野県のある街を散策していました。すると、右足の親指の付け根が痛くなってきたのです。最初は、「やはりこの靴は合わない」と思いました。新しい靴を履いていました。歩いていると、傷みがどんどん増強してきます。靴のせいにしながら部屋に戻りましたが、傷みは強くなる一方でした。地面に足をつけるだけで、まさに飛び上がるような痛みになります。「なんだこれは」と思いながら、鎮痛剤を飲んで一晩過ごしてやっと気が付きました。
「これは痛風発作だ!!」
間抜けなことに、医師である私がこの痛みが痛風発作であることに気付くのに、丸一晩かかったのです。患者が来院したときは、前後の状況を聞いて一目でわかるのですが、自分が発症したときはわからないものです。
そういえば、前回の採血で尿酸値が高かったなあ、と思い起こしたものです。
尿酸値が高いと痛風発作を必ず発症する、というものではありません。発症する人発症しない人に分かれ、そこには遺伝性があるような気がしていたのですが、私の一族に痛風発作を発症した人はいなかったので、すっかり油断していました。痛みは1週間ほど続き、やがて軽快し始めました。長い一週間でした。
治癒後は、尿酸を下げる薬を飲みだすのが普通です。しかし、私はあえて飲まないことにしました。今度発症したら貴重な経験になる、とまで思っていました。
その年(令和6年)の12月、夕方に歩いていると、右足の親指の付け根が痛いなあと思いました。しかし、その程度の痛みはよくあることなので、放置しました。すると、その日の夜の熟睡中の深夜3時頃に、その部分の強烈な痛みで目が覚めたのです。とぼけたことに、「なんだこの痛みは?無理して歩いたくらいで」と思い再度寝ようとしましたが、傷みで寝付けません。そして、やっと痛風発作であることに気付いたのです。
痛風発作の治療といえば、発症の予兆時にコルヒチンという薬を3時間ごとに一錠飲めば発症しないで治まっていくと言われますが、診療現場では、予兆時に来院する人はいません。痛みがピークになってから来院します。だから、医師にとってコルヒチンを処方する機会はなく、鎮痛剤を出して自然軽快するまで1~2週間我慢してもらう、というのが一般的な治療です。当然、コルヒチンを処方した経験のある医師はごく稀になります。連続内服は副作用が強く現れるから医者はめったに処方しない、というイメージがあります。
「コルヒチンのタイミングを逃したか」と悔やみましたが、思い起こしてみても、夕方のあの時点で痛風発作の予兆だと気付くのはまず不可能です。
しかし、私はこのとき、果敢に考えたのです。
「コルヒチンが予兆時にしか効かない、というのは誰が言い出したのだろう。副作用の問題があるから、予兆時にごく少量の投与にとどめているだけかもしれない。ピーク時からコルヒチンを内服して仮に副作用が強かったとしても、私の身体だ。患者に対しては責任があるからできないけど、この場合は、副作用で苦しむのは私一人だ。医師はこんな機会を逃してはならない。コルヒチンを飲んでみる」
まず一錠を内服しました。そして、3時間後に一錠、その3時間後にまた一錠、それを繰り返しました。6錠目を飲んでも効果を感じません。しかし、7錠目、8錠目で急激に傷みが消失してきたのです。「おお、すごい。効いている」と思いながら9錠目を内服しました。その頃にはほぼ痛みは消失していましたが、それなりに激しい副作用が発生しはじめました。副作用の詳細は、紙面の都合で別の機会に話します。⇒医療大国日本
令和6年2月、右ひざにピンポイント的な痛みを感じました。すぐに痛みは消えるだろうと思っていたら、時間とともに痛みが強くなってきました。「あっ、もしかして痛風発作?コルヒチンを飲んでみよう。4~5回くらいなら副作用もなさそうだから」と判断し、コルヒチンを1錠ずつ3時間ごとに飲みました。4錠目を飲んだときには、傷みはすっかり消失しました。コルヒチンの効果はすごいものだなあと思ったものです。
令和7年4月下旬、私は額入りの絵画を運んでいるときに、腰に鈍い痛みを感じました。このときはすぐに、「あっ、やってしまった。ぎっくり腰だ」と気付きました。もうぎっくり腰のベテランです。徐々に痛みが増強してきます。「ああ、明後日ゴルフなのに」と思いながら、もうゴルフはあきらめ始めていました、しかし、そのときふと思ったのです。
「ちょっと待て。この痛みが徐々に痛くなっていく気配。痛風発作と同じだ。そういえば、痛風発作も1~2週間で軽快する。ぎっくり腰も1~2週間で軽快する。もしかして、発症メカニズムが同じかもしれない。となると、コルヒチンが効く可能性がある。飲んでみよう」
コルヒチンとぎっくり腰の関係など、これまで聞いたことがありません。インターネットで見ても、どこにも出てきません。この状況でコルヒチンを内服するのは一種の大冒険ですが、副作用の程度は経験済みです。それほど恐れるものではないとわかります。
まず、1錠内服して3時間ごとに内服したのです。4錠目を内服した頃には、腰の痛みは消失しました。作用メカニズムは別の機会に話します。⇒医療大国日本
令和7年5月下旬。ゴルフをしているときに、同伴者の一人が「腰が痛い」と言い出しました。徐々に痛みは増強し、前かがみになってティーアップすることができなくなりました。座っているのもつらいと言って、カートの上で横になり始めました。「ぎっくり腰だ」と気付いた私は、常備したコルヒチンを1錠内服してもらいました。たった1錠で1時間後には腰の痛みは治まり始めたらしく、多少は動けるようになり、3錠目を内服する頃には完治していました。
ぎっくり腰の特効治療の発見――世紀の大発見になるかもしれません。「コロンブスの卵」的大発見ですので、今後、急速に広まり、この「発見」をめぐって、様々な議論になることでしょう。
医師の皆さん、機会があればぜひ検証活動を進めてください。⇒医療大国日本
患者の皆さん、ぎっくり腰は私に相談してください。