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月刊メディカルサロン「診断」

「脳梗塞を予防せよ」と男女の最終本能の関係月刊メディカルサロン2012年1月号

私は、かつて執筆した書籍「あなたの健康を保証する本」(三笠書房・知的生き方文庫)の一節で次のように述べたことがあります。

リハビリセンターに行ってみてください。身体の一部が不自由になった高齢者が一生懸命にリハビリに取り組むかたわらで、全くやる気を失った50歳前後の男性の一群が見られます。
その人たちは、ついこの前までは、好業績をあげて社会の最前線で活躍し、会社の未来を背負って立つことが約束されていたバリバリのビジネスマンだったのです。彼らは、不慮の健康トラブルのために、すべての意欲を喪失しているところなのです。
脳梗塞を起こして、身体が不自由になってから、ああすればよかった、こうすればよかったと論じても意味がありません。日頃から重大な健康トラブルが起こりようのない身体にすることが大切です。
健康管理上、もっとも大切なのは、まず脳梗塞を予防することです。そのためには、動脈硬化を進行させないことと、血栓(血小板の凝集塊)のできにくい身体にすることが、重要なキーポイントになります。

この書籍が出版されたのが平成12年ですので、もう10年以上前のことになります。以後、少子高齢化、格差の社会が進行し、男女の姿がさらに変貌しました。

ここ十余年で女性がますます社会に進出しました。事業上の狩猟的活動においては女性の方が好成績をあげるケースが目立つようになり、20歳代男女が「よーい、ドン」でスタートすると女性の方が優れた仕事を成し遂げる気配になっています。しかし、女性のその勢いは、30歳代で鈍ります。
鈍る原因は、大多数の女の最終本能が、社会活動ではなく、「人類の継続性への役割」(=出産、子育て)に向いてしまうからです。
子育てというのは、莫大な時間、資金、労力を要する一大事業です。資金不安定の中で、一か八かの子育て事業に取り組むわけにはいきません。十分な資金的余力がなければ取り組める問題ではなくなったことに気づいて、いつの間にか少子化時代になったのです。

そこで、男の本来の役割というものを見直すことになります。男の重要な役割は「女の最終本能=人類継続性への役割」を全うさせてあげるための資金源になることです。男が安定した資金源になれなければ、少子化社会は漸次進行していきます。この観点から考えると、やがては、40歳代の男と20歳代の女との婚姻が普通化するかもしれません。

ところで、男というのは、この世にポツンと現れた一代限りのエイリアンのようなものです。この世にポンと現れて、暴れまわって間もなくポンと消えていく。人類の継続は女に任せ、社会を進歩させるために、切腹覚悟、討ち死に覚悟で社会に向かってチャレンジし、思う存分に活動し、社会に十分に貢献したら、心地よい死を迎えるのが男の人生の歩み方なのです。そして、その死にあたって自己の死を最大に利用して、わが子への教育を施せば、まさに役割を全うしたことになります。その過程で、女の最終本能を満たすための役割、責任をしっかりと果たしておけば、立派な人生を送ったと言えるでしょう。社会で活躍する男というのはそういうものであり、またそうでなければいけません。女の最終本能とはまったく異なる最終本能を持っているのです。

しかし、女は、男に対して人類継続性の資金を確保するための役割を望むだけでなく、さらに、不平、不満、文句を述べて、自己の立ち位置を維持し、あるいは高め、支配性を確保しようとする側面的本能も持っています。その不平、不満、文句は「素敵な机を買ったから、さらにそれに合う椅子が欲しい」や「素敵な洋服を買ったから、さらにそれに合うネックレスが欲しい」に類似する本能から発しています(男の場合は「いいスーツを買ったから、他のことは我慢しよう」になる)ので、欲張りの結果であることがしばしばですが、男はそれに対抗する煩わしさを受け入れることができません。ここに、夫婦仲の破たんの因、あるいは男が虜囚となる因が潜んでいます。破綻、あるいは虜囚化を避けるアイデアを冷静に展開できる男は稀です。もちろん、ハチャメチャな男だけれども、妻が慎み深く辛抱強かったおかげで、良好な仲を築いている男女もいます。

男女仲を全うし、一定の社会的使命を果たし終えた年齢になってから2人で人生を楽しむことに焦点をあてるのなら、男が男の役割である「人類継続性の資金源」をはたしている限りは、女は滅多に今の不平、不満を述べないほうがいいでしょう。女側としては、女の最終本能が自分に苦労を余儀なくさせる本能であったことを恨めしく思いながらも、未来のために今を耐えるのが正解です。男は切腹覚悟、討死覚悟の人生を送っているというのを忘れてはいけないのです。一方では、男は、女には子育て終了後の未来に素晴らしい夢を与え、それを必ず実現しなければいけないのです。
ただし、子育て資金の供給にさえ不安がある男は、婚姻時から妻の元を離れず、妻と24時間365日の二人三脚体制を築くのがよろしいです。また、女が最終本能に目覚める前に出産したら、男女とも非常に苦労することになりますので、その場合は別の覚悟が必要です。
「愛」「救世主」などを柱とするキリスト教文化とは異なる日本文化においては、そのような夫婦の役割分担の割り切りが大切で、それにより両者とも平和に人生を全うできるのです。婚姻の儀式では、キリスト教的な訓示ではなく、まさに上記のような訓示を垂れるべきなのです。

さて、そこで、ひとつ気を付けてほしいのが健康問題で、特に困るのは脳梗塞です。男が脳梗塞を起こして麻痺が残り、手足が不自由になったり、しゃべるのが困難になったり、自分で食事することができなくなったりして、満足に社会活動ができなくなり、それでいて生き延びているというのは、女の本能にも合致せず、男の本能にも合致せず、日本文化の中では、どうにも恰好がつきません。脳梗塞だけは何としても予防しなければいけないのです。
時代が変化しても、つまり格差社会が進行しても、「まずは脳梗塞を予防せよ」というのが、健康管理の第一条と言えるのです。脳梗塞予防のキーワードは、メタボリック指標だけでなく、EPA体質、PAI-1、アディポネクチンですので、この分野をよく学んでおいてください。

※この文書を読んだメディカルサロンのある女性スタッフは「最近の男たちは、女の収入を頼りにして結婚したいと言い出すんだよね」とコメントしていました。

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